ブログ創世紀

ななんと、夏目房之介さんがブログを始められたとのこと。びっくりした。http://www.ringolab.com/note/natsume/

http://www.ringolab.com/note/natsume/archives/001500.html

しかし、まぁとにかくはじめてしまったので、ある程度までやらないとイケナイのである。
 けれども、やはりこの、長年モノ書きをやっておるせいか、客がいないとナカナカ書こうという気持ちにもハリというものが出てこない。

ということなので、紹介してみたのですが、いいんですよね?

数年前、彗星のように2ちゃんねるに現れ、彗星のように去っていって、ネットでいくつかの連載コラムはお持ちではあるが、個人ホームページなどは開設されてなかったので、まさかいきなりブログで来るとは思わなかった。青天の霹靂。漱石の孫。

夏目さんの著書では、私は『読書学』が一番好きで(とにかくオモシロイ)、たまに手にとって拾い読み的に読み返し始めると、気づくと全部読んでしまっていたりする。
1986年〜1991年の連載をまとめたものだが、先日手塚治虫文化賞特別賞を受賞した、「みなもと太郎風雲児たち』賛」なんて項もあったりして、時代を15年ぐらい先を行っているといえよう(?)。
実ははてなダイアリーの一冊百選に挙げようかと思ったのだが、絶版ということなのでやめたんである。←夏目風文体

ちなみに『読書学』にも夏目さんのマンガ表現論の萌芽が見られるのだが、私が夏目さんのマンガ論で一番好きなのは、『手塚治虫の冒険』 ISBN:4094025219 である。講演のテープ起こしという形をとっているため(だがかなり手を入れてあるらしい)会話体で、しかも夏目さん特有のユーモアが盛り込まれているのでとても読みやすいだけでなく、これ一冊で夏目流マンガ表現論、夏目流手塚治虫論、そして夏目流戦後マンガ史を一気に入門できるという奇跡の書。オススメ。

私が夏目さんをものすごく尊敬しているのは、たとえば記号論のような外国の学問を安易に流用して語るといった借り物の目線・借り物の言葉でマンガを語るのではなく、自分の目線・自分の言葉でマンガを語るための語彙を創り出していったからである。
できることなら、私もそうありたいものである。

問題意識はどこにある?

地下鉄を乗り継いで早稲田へ。研究会。
http://d.hatena.ne.jp/AYS/20040327#p4でもちょっとだけふれて、私の勉強不足のせいでいろいろお叱りを受けた
本とコンピュータ』2004年春号
http://www.honco.jp/magazine/06_manga/index.html

特集】マンガはどこにある?
マンガを語る地図を作ろう 夏目房之介さんに聞く 
 聞き手 小田切博 153
だからマンガは面白い 最新マンガ論ショウケース2004
 自律化するキャラクターたち 伊藤剛 158
 継続と断絶――五十嵐浩一の九〇年代 小田切博 163
 なぜ『少年チャンピオン』の面白さは語れないのか 宮本大人 166

の続きということで、夏目房之介+小田切博+伊藤剛宮本大人という豪華半公開座談会が。
上記の日記の後、この記事は読んだのだが、マンガ言説史に関しても私は不勉強なので、正直記事だけでは問題意識がよくわからなかった。そんな状態で話を聞かせていただいた。
「マンガは子どものものという風潮があるが、そもそもそうではなかった」というところから始まって、マンガ言説史を年代別に概観。

宮本大人さんの板書より。例によってわけがわかってない私がメモしたので、間違ってる可能性があります)
1950年代……教育学的、斎藤次郎・峠あかね
1960年代……漫画主義、ガロ・COM・真崎守・石子順造
学生運動、下火に
1970年代……村上知彦米沢嘉博・橋本・中島・亀和田……文体が共通
1980年代……大塚英志四方田犬彦呉智英:『現代マンガの全体像』は1950〜1960年代のマンガ論を批判、1970年代のものは無視
1990年代……表現論:自明性が共有できないときのマンガ論。自明なものが崩壊したので作り直そうという運動。石子と似ている、夏目房之介
そして、ネット等でマンガ論の時代に

「米沢・村上は自分たちのコミュニティをつくって出版社と闘おうという一種の革命思想だったが、大塚は企画書の天才でオトナを説得するのが上手い、出版社に寄生して権力を握った。岡田斗司夫も似ている。」等々。
最後は宮本さんが『本とコンピュータ』で表現した音楽雑誌の比喩をもとにいろいろ議論。
その後の飲み会にもお金がないくせについてく。夏目さんや宮本さんにいろいろ教わる。夏目さんには『マンガの読み方』をいかにして作ったか、という話を少し聞かせていただいた。とても参考になる。
その他、岐阜から来たSF大会の常連らしき典型的な中年オタク氏(←この表現に他意はない)にいろいろ話を伺う。で、その方は「これまでサインをもらったことがある人リスト」というのを持ち歩いておられ、その中に「及川奈央」の名が。しかも生写真も持ち歩いていて、見せてもらった。一日に二度もこの名前に遭遇するとは。聞くと、結局AV女優らしい。うちに帰って確認してみたところ、うちにあった雑誌にも及川さん出てました。有名な人だったのね。

lock on target

先日http://d.hatena.ne.jp/AYS/20040314夏目房之介さんがBSマンガ夜話http://www.nhk.or.jp/manga/ぶっせん』の回http://www.nhk.or.jp/manga/arc/23/02/index.htmlで、「後ろでこのキャラがこういうことしてる」とか普通の読者は気づかない細かいところに気づくゲストがいた、という話をされていた。
私もこれは記憶にある。最終回に読者も忘れていた(作者も普通なら忘れてる)幽霊がちゃんといるとか。
たしか女性ゲストだったと思うけど。検索してみた。
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Cell/4580/list/23.2.htm

石堂夏央はいままでの女性ゲストの中ではなかなか良かった。
甲殻機動隊の時の岡田氏の解説のような
マンガを読みなれてない人が読んだらサッと読み流すような
細かい画のところの話はなかなか盛り上がっていて良かった。

これだ。たしかに『攻殻機動隊』のときの岡田斗司夫氏の解説もすごかったなあ。工学迷彩で消えた多足歩行ロボが足をついたときに出る砂煙の描写に対する指摘とか。

マンガ夜話』は確実に視聴者の批評的見方としてのマンガリテラシーを上げていると思う。
私なんかは絵よりも脚本の方にこだわるタイプなので、どうしても絵よりもふきだしだけで意味を読み取ろうとしてしまう。それでも、『マンガ夜話』などのおかげで絵に対する読解力はそれなりに上がったと思う。

たとえば『プラネテス』2巻p.34の2コマめでロックスミスが記者会見で釈明しなかったことに対して、三人が「なんて奴……」と異口同音に言っているが、ユーリとフィーは軽蔑の表情があるのに対して、ハチマキは単に驚いているだけとか。(ユーリとフィーの表情も微妙に違う)
p.146の最初のコマ、爆発の瞬間、ゴローさんがちゃんとハチマキとタナベをかばってるとか。
そういうのは昔だったら読解できずに流してしまっていたと思う。
(でも3巻p.143の「「娘さんをボクにください!」って感じ」のコマだけ、ジーパンのはずのタナベがスカートになってるというミスはネットで知るまで気づかなかった)

検索の過程でいしかわじゅん氏のページのこれを発見したのだが、マンガ夜話の控え室ってこんなのhttp://hw001.gate01.com/jun-i/manga23.htmlなのか。もっと応接室っぽいとこを想像してた。個室ってのもあるようだから、そっちはもっと豪華なのかな?

innocence

ジュンク堂に。堤抄子エルナサーガ2』3巻がいつのまにか出ていた。ムック『ぼくドラえもん』創刊号の再販版が出ていたので購入。マンガ夜話で絶賛の業田良家自虐の詩』も購入。今日は大散財日だな。
研究会に。今日はフランスのジャーナリストJulien Bastideさん*1がいらしていた。Bastideさんは日本語がほとんどできないので、私はインチキ英語を駆使してコミュニケーションをはかる。Bastideさんもネイティブスピーカーじゃないからか、気を使ってくれたのか、あんまりペラペラ喋ってこなくて聞き取りやすかった。
本とコンピュータ』最新号の「特集 マンガはどこにある? マンガを語る地図を作ろう 夏目房之介さんに聞く」http://www.honco.jp/magazine/06_manga/index.htmlが話題に出て、Bastideさんがどういう内容なのかと聞いてきたのだが、私はまだそのインタビューを読んでいなかった。そこで、マンガ研究者の秋田さんが概要を日本語と英語で説明し、私も補足説明を試みる(私の方がBastideさんの近くに座っていたので)。
秋田さんの説明だと、どうやらマンガ評論家・研究者の世代の断絶についての話だったようだ。新しい世代のマンガ研究者・批評家は、それまでの世代の研究成果をふまえていない現状がある、と*2
私は未読なうえ、マンガ言説史に(も)疎く、しかも英語力薄弱なのでさっぱり英語で説明できず、要領を得ず。
(繰り返しますが、私は記事を読んでいません。「世代間の断絶がテーマ」というのは、あくまで秋田さんの説明をもとにした私の解釈なので、http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20040331#p1さんがおっしゃるように、実は誤読なのかも)

また、それに関連して、秋田さん曰くまるでマンガ表現論(もっというとマンガ研究?)は夏目房之介さんが始めたかのように一般に思われているが、そうではない、という話とか。

その他雑談。

――(AYS)『イノセンス』見た?
(Bastide)「今朝見た。映像が綺麗だったよ」
――絵は綺麗だけど、シナリオは押井監督の趣味で難解らしいけどどうだった?
「日本語がわからないからその辺はわからないよ」
――あ、それもそうか。
「『攻殻機動隊』や『パトレイバー』もいいね」
――『パトレイバー』の1作目はエンターテイメントとメッセージ性が両方あったけど、2作目は押井監督の政治的なメッセージだけでつまんなかったんじゃない?(英語なので細かいニュアンスが出せない)
「そう! 政治的メッセージだけ。僕も1作目の方がいいと思う」
――『東京ゴッドファーザーズ』見た? あれはよかった。
「パリのアニメ映画祭で見たよ。リアルな風景描写、そして笑いと感動のバランスが素晴らしいね」
――他にどんなアニメが好きなの?
「『カウボーイビバップ』とか」
――あー、私も好き。じゃ、どんなマンガが好きなの?
「んー、いっぱいありすぎて選べないね。最近読んでるのは『軍鶏』」
――読んだことないな。時代劇だっけ? それともヤクザ?
「ヤクザ。*3あと『MONSTER』とか」
――『MONSTER』はヨーロッパの話だけど、ヨーロッパ人が見るとやっぱりどこか変なヨーロッパに見えるんじゃないの?
「いや。ヨーロッパ人以外がヨーロッパを描くとたいてい変なんだけど、浦沢のはそうじゃないよ」

みたいな話をした。
内記館長のご好意で、現代マンガ図書館の書庫にBastideさんをご招待。私は以前利用したことがあるものの、書庫には入ったことがないのでドサクサで入れていただく。成り行き上通訳まがいのことをしたのだが、英語力もさることながらBastideさんよりも日本マンガに対する知識がなくてダメぽ。
江戸川橋付近の桜並木を見る。ライトアップっぷりがいまいちなので十分見れなかったが、素晴らしかった。昼にまたに行きたい。

*1:Bastideさんを適当に検索したらこんな記事が。http://www1.kcn.ne.jp/~cfjo/ALBUM.htm http://www.boilet.net/jp/nouvellemanga_bilan_1.html

*2:私なんかだと、たとえば夏目さんが上の世代でid:goito-mineralさんが新しい世代ということなのかと最初思ってしまったのだけど、そうじゃなくてこの場合は夏目さんが新しい世代で、石子順造とかが古い世代に当たるという。ただし、夏目さんが石子の業績を無視している、とかいう個人レベルの話ではないようなので誤解なきよう

*3:ネットで検索したら『軍鶏』はヤクザというより、少年院→格闘マンガのようですな

マンガの読み方

昨日のICC「まんがの文法を知るために」で、その他考えたことをメモ。
視線の停留は主としてふきだしで起こり、絵は周辺視で見ている傾向にあることが明らかになった(というように私は実験結果から解釈した)。私なんかは画より脚本に興味が行くタイプなので自分の感覚としては当たり前なのだが、ちょっとだけ意外だった。
それはつまり、ほとんどの人が絵よりも文字の方に読み取りコストをかけているということなのだろう。
大野健彦さんは「『ブラックジャックによろしく』なんかはすごく緻密に背景が描かれているのに、みんな見てないわけです。アシスタントがかわいそうですよね」と冗談で言っていて、夏目房之介さんが後で「いや、ちゃんと見てなくても重要なんです」というようなことを言っていた。
バードウォッチングのようなものだろうか。鳥を見に行くために森へ行って、双眼鏡で注視するのはいつも鳥。でも、周辺視ではいつも森を見ている。ここでの森というビジュアルは何の影響も人に与えないのかというと、そんなわけはない。

絵と文字、どっちが表現として強いかというのはケースバイケースだと思う。でも、内容にもよるが(哲学論文とかじゃなくてたとえば日常生活で目にするような風景の場合とか)、一見して意味を読み取りやすいのは一般に絵の方だろう(それこそ「百聞は一見に如かず」)。絵の方が、情報を受け取る際に必要とするコストが一般的に少なくて済む。*1
文字の方に視線が停留したというのは、単に字の方が情報伝達性能が低いからというふうにも解釈できる。そもそも絵は周辺視でも割と見れるけど、文字は周辺視で読むのは難しい(気になるキーワードなら目に入るけど)。

マンガというのは、絵と文字という両方が併存するという特色を持ったメディアである。
すごく乱暴な議論になるけど、一般に活字だけの本よりマンガの方が読みやすいというのはもちろん絵があるからだろうし、それが今日のマンガというメディアの隆盛の大きな理由のひとつだと思う。

今回の実験では視線の停留する場所と時間を計測したにすぎない(もちろん大きな意味がある)。が、絵よりも文字の方に視線が停留したという結果をもって、絵よりも文字の方が重要などという結論にはもちろんならない。
調査する方法を編み出すのは難しいかもしれないけど、絵と文字が読者に対してそれぞれどういう効果を与えているのかも科学的に検証してみてほしいところ。

以下蛇足。フォント(書体)というのは、文字自体に絵的な意味づけをするわけで、その意味ではマンガよりもっとハイブリッド化を推し進めたものといえる。この辺は経験則と、研究で科学的に明らかになってる部分とかはどうなってるのかなと思った。ロゴデザイナーの人たちはやっぱり経験と感性でやってるのか、それとも多少は教科書的なノウハウみたいなのがあるのか。
そういえば、アジア圏は漢字という象形文字に親しんでるからマンガが好きなんだ、みたいな与太話もあるよなあ。その辺も科学的に検証してみたら面白いかも。

*1:描写する際のコストが、絵と文字のどっちがかかるかは微妙である。似顔絵を文字で表現しようとするととんでもない文字数が必要になる(無理かも)。でも「百万の軍勢が現れた」なんかは文字の方がずっと低コストである。

夏目と目

また新宿というか初台のICCへ。
「百聞は一見にしかず──21世紀の新しい表現の作法を求めて」のシンポジウムを見に行ってきた。

シンポジウム「まんがの文法を知るために」
記録と表現にて実験を行なった,人々がまんがをどのように読んでいるのかを検証する実験結果の報告会.実験の主旨,実験の結果の発表ならびに,結果を基にしたディスカッションを行なう.
日時:2004年3月14日(日)午後2時─午後5時 [終了しました.]
場所:ICCギャラリーA
入場料:一般500円,大学生以下無料
定員:150名(事前予約制、定員に満たない場合は当日先着順)
*参加ご希望の方はこちらの参加申し込み/申し込み状況からお申し込みください.
出演者 : 夏目房之介(まんが評論),大野健彦(NTTコミュニケーション科学基礎研究所),中澤潤(千葉大学教育学部),笹本純(筑波大学芸術学系)

http://www.ntticc.or.jp/Calendar/2004/Seeing_is_Believing/Events/event02_j.html
実験の趣旨などは伊藤剛さんのレポートをid:goito-mineral:20040315をご参照ください。(横着すぎ)
会場に入ると現代マンガ図書館の内記さん、元ガイナックス社員の某さん、マンガ研究家の秋田さん、NTT出版の植草さんを発見。後の休憩時間でマンガ評論家の伊藤剛さん、マンガ評論家の藤本由香里さん、ベクターの池川さんも発見(発見順)。その他私が面識のないマンガ評論家・編集者の方々もいたようだ。
登壇して講演できるクラスの人々が客席にゴロゴロいるってのもすごいなあ。
客は私の目算では50人ぐらいかな? 昨日の半分近い。

大野さんはパックマンの視線云々の研究をした方か。なんか昔論文を調べてたとき見かけたような記憶がある。その論文これかな?(PDFなので注意)http://www.brl.ntt.co.jp/people/takehiko/papers/jcss98.pdf

実験に使ったのは少女マンガ『桜蘭高校ホスト部』、大人マンガ『ブラックジャックによろしく』、少年マンガ『怪物くん』、アメコミ『ヘルボーイ』、4コママンガ『あたしンち』。で、いま列挙したのは(本一冊じゃなくて見開きを)読む速度が速い順。
大野さんが「どう見ても『あたしンち』が一番読みやすいのにかかわらず、一番遅いという意外な結果が出た」みたいなことを言っていたけど、4コママンガが一番セリフの密度が濃かったり、いちいちオチがついてたりして、読むスピードが遅いのは当然だと思うけど違うのかな?
夏目さんは「世田谷線という歩いてすぐの距離で停まる電車に乗っていると、ものすごく長い距離を乗っているような気がする」*1という例を出したりして、実時間と体感時間の違いを話に出して興味深かった*2

その他、実験の細かいとこにいろいろツッコミを入れたいところだけど、まだ始まったばかりだし面倒くさいのでやめておこう。

本日の夏目の目のコーナー(ウソ)。

ブラックジャックによろしく』の2巻の24ページの下段コマ。
「今すぐ宮村さんの退院手続きをとるの……」というふきだしがコマの右上にあって、次のセリフ「他のいい医者のいる病院に連れていくんだよ……!!」がある左下のふきだしまで線を引くと、その間に挟まっている人物の顔のアップの目と平行になっているわけです。
次のページの最初のコマでも、同じように人物の顔が配置されている。
普通は顔が、アップでは目が、記号になっているわけです。
このマンガは、だいたい全部こうなってる。すごく教科書的な視線移動をしているわけです。だからすごく読みやすい。

(例によって夏目さんのお話を私がメモしたものを元にした再現で、実際の発言とは多少異なります)

こういう視線移動を無視しまくりの小林源文のマンガとかで実験するとどうなるんだろ。


終了後、夏目さん達は朝日新聞か何かの取材を受けに。
打ち上げに混ぜてくれるということなので、冒頭の人たちと立ち話をしながら待つ。
取材が終わり、冒頭に書いた方々(一部を除く)と演者の方全員で地下のそば屋へ。
すんごく濃い話。みんな、熱いよ!(ちなみに今日のシンポジウムとか今回の実験の話はぜんぜん出ませんでした)
伊藤剛さん語りまくる。藤本由香里さんも「変なスイッチ」(夏目さん曰く)が入って語りまくる。夏目さんはマンガ夜話のときと同じように、基本的に聞いていて、要所要所で的確なツッコミと総括的な見解の披露。
モニターで読むマンガについてとか。大塚英志の本を誰かが誉めてたりとか(『戦後まんがの表現空間―記号的身体の呪縛』ISBN:4831872059
『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』ISBN:4061497030とも言ってたけど)。マンガ喫茶の役割や貸本屋とか貸与権の話とか。石子順造の文章は下手だと誰かが言っていたりとか。マンガ夜話で夏目さんが地雷発言をしてもいしかわじゅんが言ったことになる話とか。
笹本さんはこうの史代『夕凪の詩』*3を激賞。マンガ家のみなもと太郎さんが昨年の(?)手塚賞短編部門に強力に推したそうな。研究会にもいらしているマンガ家の山本夜羽音さんもMLで激賞していた。あ、検索したらはてなユーザーでらしたのか。この日付で詳しく書かれている。→id:johanne:20040225
藤本さんが『セーラームーンR』の映画が名作として名高い、とおっしゃっていた。そうなんですか?>識者の方々
笹本さんはドラマ『エースをねらえ!』が良かった、とおっしゃっていた。私は見てないので想像するしかないのだが、ヒロインが亡くなったコーチの日記を読むという最終回のシーンで、日記の文字が涙でにじむという演出が、多くのことを語っているのが素晴らしいとか。

藤本さん、伊藤さん、夏目さんらがなんと全会一致で「あれはいい!」と言っていた、よしながふみ『愛すべき娘たち』ISBN:4592132955(作者は『西洋骨董洋菓子店』の人)。この三人の意見が合うというのはすごいことのような気がしたので、帰りに買ってみたので後で読みます。
他にもいろいろ作品名が飛び交ってたけどマンガ読みじゃないのでよくわからなかった。アインシュタインを看取った看護婦みたいですいません。
シンポジウム中継を見てた方:id:ness:20040314#p2

*1:どうでもいいけど私は3日前id:AYS:20040311に初めてその存在を知り、脇を歩いて、無人駅で改札もないワンマンバスみたいな電車だなあ。駅間も近いし、と思ったのだった。タイムリーな例

*2:ビデオゲームでも、1回のロード時間が長いよりも、トータルでは同じ長さでも短いロードが頻発する方が長く待たされているような気になる(と思われる)のと同じだと思う

*3:『夕凪の詩』『週刊漫画アクション』2003年9月30日号に掲載され、現在では著者の同人誌で読める。通販はファンサイトhttp://kouno.mangalink.jp/からたどってください。池袋ジュンク堂などでも販売中。

マンガ部門の受賞作品・審査委員会推薦作品のうち、知らないタイトルのものをパラパラとめくっていると、見覚えのある絵柄が。タイトルは『日本武尊』。あれ、これはたしか川原まり子さんの……と(なんと私は名前を覚えていた!)プレートを見るとやっぱりその名前が。びっくり。8年ぐらい前に私が『ファイアーエムブレム』のメーリングリストをやっていたときに、強烈な個性の論客として参加された方で、実際に会ったことはないが受賞作品も当時ご好意で送っていただいた記憶がある(実家にある)。この作品は自費出版物(いわゆる同人誌)で、このように評価されるとはすごい。『最強伝説黒沢』とか『魁クロマティ高校』と並んでるんだもんなあ。調べたら当時とほぼ同じホームページが。http://www.osk.3web.ne.jp/~tanuki/
『新釈うああ哲学事典』はじっくり読みたいのでさっさと単行本化してくれないかなあ。内容が濃いんだから薄くていいんだよ!