本を手に取った回数をカウント:書籍のICタグ実験@ジュンク堂

久々にジュンク堂池袋本店に行ったら、入り口付近の平積みコーナーで、本に付けられたICタグの実験デモ装置が置いてありました。

↓「世界初!」とか書いてあります。

機械の前に積んである本を手に取ってしばらくすると、画面に手に取った本のタイトル等の情報が表示されます。

(ただ、感度はあまりよくありませんでした。本を棚からけっこう離さないと認識しないようです)


ICタグは、万引き防止や、在庫管理に使われるのだとばかり思っていましたが、「手に取られた回数」というのもカウントできるんですね。


「表紙やタイトルがキャッチーで手には取るけど、あまり買われない本」、「手に取る人の数は少ないけど、売れる本」というデータが取れるわけですね。
あ、それってamazonがすでに実現していることではないですか。


ICタグは購入後も有効なので、「カバンの中に入っている本を盗み見られてしまう!」とか言われてますが、どっちかというと、自分の家で本をどこにしまったか見つけるのに使えると便利だと思います。
あの本はどこにやったんだっけ? と検索すると、「押入れの奥のあの箱の中!」と出るとか。
あと、勝手に自分の書庫のデータを作ってくれると便利そう。


でも、リサイクルの時には困るのかな?




ICタグ、買い物変える――店頭で試験導入、すぐ決済、携帯に商品情報
http://www.shopbiz.jp/contents/IC20070215/1902_023.phtml

ICタグを埋め込んだ書籍を初めて消費者に販売、出版業界が4回目の実証実験:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070213/261880/


ちなみに、実験で置いてあった本は下記の新書のベストセラー。↓
一般流通しているものにもすでにICタグがついているんでしょうか?

国家の品格 (新潮新書)

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世界の日本人ジョーク集 (中公新書ラクレ)

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プロフェッショナル原論 (ちくま新書)

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人は見た目が9割 (新潮新書)

人は見た目が9割 (新潮新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

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適当論 [ソフトバンク新書]

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関連ありそうな本↓

RFID + ICタグ システム導入・構築 標準講座

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[図解] ICカード・ICタグしくみとビジネスが3分でわかる本

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RFIDの現状と今後の動向

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ポイント図解式RFID教科書―ユビキタス社会にむけた無線ICタグのすべて

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無線ICタグ活用のすべて (日経BPムック)

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絵とき無線ICタグ―広がるRFIDの世界

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ICタグのすべて

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ICタグビジネス―実践手法と新分野への適用

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食の安全性-その徹底検証―〈トレーサビリティICタグ〉の新技術で

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ユビキタス無線ディバイス―ICカード・RFタグ・UWB・ZigBee・可視光通信・技術動向

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ICタグって何だ?―ユビキタス社会を実現するRFID技術 (テクノロジーを知る)

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ユビキタス無線工学と微細RFID―無線ICタグの技術

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よくわかるICタグの使い方

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図書館とICタグ

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図解 「ICタグ」がビジネスを変える

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図解「ICタグ」がよくわかる

図解「ICタグ」がよくわかる

本のオビの入れ替え遊びとモンタージュ効果

知り合いに本のオビ(腰巻ともいう)の文句を日々考えている編集者や有識者の方がたくさんいらしているのになんですが、これは久々に面白かった。↓

日刊スレッドガイド マンガの帯つけかえて遊ぼうぜwwwww
http://guideline.livedoor.biz/archives/50831300.html

⊂⌒⊃。Д。)⊃カジ速≡≡≡⊂⌒つ゚Д゚)つFull Auto マンガの帯つけかえて遊ぼうぜwwwww
http://www.kajisoku.com/archives/eid1168.html



なるほど! この発想はなかった。

これはマンガだけじゃなくて、すべての本でできますね。
海外の本は、オビどころかカバー自体ないものがほとんどなので、これは日本ならではの遊びといえます。


まったく関係のないふたつのものを組み合わせると、受け手が勝手にその関係を見出して意味を見出してしまう、というのは、
編集によって生み出された文脈によって、ニュートラルな映像を解釈してしまうという、モンタージュ効果ですね。

モンタージュといえば、クレショフ効果と呼ばれる有名な実験があって面白いです。

クレショフ効果とは何かというと、彼はまずある役者の無表情な顔のショットを撮ってですね、それを色んな別なもののショットと繋ぎ合わせてみたんです。
無表情な顔のショット→暖かそうなスープ
無表情な顔のショット→棺に入れられた老婆
無表情な顔のショット→遊んでいる小さな女の子
ってな感じです。どのパターンでも、二つ目のショットには最初の役者は全然出てこないんですよ。するとどうなるかっていうと、見ている人が勝手に二つのショットの意味を繋げて解釈するわけです。顔のショットはみんな同じなのに、最初のパターンでは「空腹」、次のやつでは「悲しみ」、最後のやつでは「愛情」といった別々の表現を感じ取っちゃうんですね。これを最初に見たソビエトの観客は、「ほとんど表情を変えずに色んな感情の変化を表現するとは、なんてすごい俳優だ!」ってビックリしたそうですよ。つまりショットには映っていない意味が観客の頭の中で作られるんですね。

http://filmstudies.blog21.fc2.com/blog-entry-40.html


ドラマの予告編なんかでも、このモンタージュの手法がよく利用(悪用)されていますよね。
たとえば予告編で、

  • 倒れる主人公の男→泣き叫ぶヒロイン

という、ふたつのシーンが編集されているものがあったら、
我々は「次回は主人公の男が倒れて、ヒロインが泣き叫ぶという波乱の展開!」かと思うわけですが、
実は見てみたら、

  • 主人公の男が空腹を表現するために、ふざけて倒れるフリをするという本筋とはぜんぜん関係ないシーン
  • 財布を落としたのに気づいて泣き叫ぶヒロインという、単なるヒロインのドジっ子っぷりを表現したシーン

だったりして、我々は編集のマジックに騙されるわけです。

予告編入りのドラマのDVDを借りてきて、まず本編を見てから、前回の終わりについている予告編を見ると、どこをどう切り抜いてどういう予告編に仕立て上げたのか、編集の勉強になりそうな気がします。

最近ではYoutubeによく上がっているMADムービーなども、多くはこの編集の遊びですね(音声の編集も含む)。
あるいはデスノコラとかも。


話を戻すと、このオビの入れ替え遊びは、先日紹介したギャグ作家「ひだけーだい」さん*1のお笑い分類にあったかどうかは忘れましたが、ひとつひとつは特に面白いものでなくても、組み合わせただけでその違和感または違和感のなさで笑えるというのも、お笑いの基本要素のひとつですね。
モンタージュから来る笑いといえるでしょう。



マンガだけじゃなくて、あらゆる書籍で応用がききますね。
この遊びは定番化していってもいいと思う。

でも、これって著作権違反になるのかな?
まあ、著作物の無断掲載という時点でアウトですけど、気になるのは「同一性保持権」になるのかとか。
組み合わせて提示しただけで、それぞれには手を加えていないのですが、オビを付けただけでも表紙を改変したことになるのかな、やっぱり。



実名でオビの推薦文を書ける人というのは、有名人である必要があって、しかもその発言を信じてもらえる立派な人でないとダメなんですね。
自分が買う本には、よく夏目房之介さんや東浩紀さんが推薦文を書いていますが、そう考えるとますますスゲーという感じです。*2


オビは編集者や営業の判断で付け替えられるものなので、Amazonの書影にはほとんど反映されていません。
ですから、いろいろなオビを見るというのも、リアル書店でウィンドウショッピングをする楽しみのひとつになるかもしれません。

雑誌「ダ・ヴィンチ」には、オビを論評する「腰巻き大賞」なんてコーナーがあったり。

ダヴィンチ 2007/03月号

ダヴィンチ 2007/03月号


それにしても、けっこうオビを捨てている人がいるんですね。
(まあ、書店でも勝手に捨てていいことになっているみたいだけど)

オビもけっこう重要な情報源なので、実家の近所の図書館では、オビをわざわざ切って分解して、表紙をめくった次のページの空白のところに貼り付けたりしていたりしていて感心しました。
それにしても、国会図書館ではオビどころかカバーや付録を全部捨てているのがありえない。

私は、オビはつけたままだと本棚に出し入れするときに破れてしまうので、取り外して折って栞として使っています。


一人でもできる映画の撮り方

一人でもできる映画の撮り方

ネーミングの極意―日本語の魅力は音がつくる (ちくま新書)

ネーミングの極意―日本語の魅力は音がつくる (ちくま新書)

ぐっとくる題名 (中公新書ラクレ)

ぐっとくる題名 (中公新書ラクレ)

「売れるネーミング」の成功法則―よくわかる!ネーミングによるブランド戦略 (DO BOOKS)

「売れるネーミング」の成功法則―よくわかる!ネーミングによるブランド戦略 (DO BOOKS)

怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか (新潮新書)

怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか (新潮新書)

ヒット商品をつくるネーミング辞典

ヒット商品をつくるネーミング辞典

すべてはネーミング (光文社新書)

すべてはネーミング (光文社新書)

売れる! ネーミングの発想塾

売れる! ネーミングの発想塾

*1:http://d.hatena.ne.jp/AYS/20070208

*2:夏目房之介さんといえば、祖父・夏目漱石とのツーショット写真がすごかった→http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2007/02/post_550b.html

ゴンブリッチ先生の「美術の物語」vsウンベルト・エーコ先生の「美の歴史」

すごい美術本がついに出ました!

美術の物語

美術の物語

原書は、超ロング&ベストセラーらしい。

大型本で、値段の割にかなり豪華な本だ。
カラー図版多数!

重要作品は折り返しになってたりする。

建築や現代美術にも言及。

これと、同じく図版満載のエーコ先生のこれ↓を揃えれば、かなり無敵な気分になれます。

美の歴史

美の歴史

こっちは現代の映画女優まで射程範囲です。



ちなみに、「美術の物語」の表紙、地味だなあ。逆にこっちの方が売り場で目立つという戦略か?
と思ったら1995年版の原書のデザインのままだった。

The Story of Art - 16th Edition

The Story of Art - 16th Edition

でも、同じタイトルで2006年にも原書が出ている。改訂版?
The Story of Art: Pocket Edition

The Story of Art: Pocket Edition

「機動戦士ガンダム一年戦争全史 上―U.C.0079-0080 (1) 」と「ガンダム無双」

書店に行ったら、妙に違和感のない本が出ていてびっくり。

機動戦士ガンダム一年戦争全史 U.C.0079-0080 (上)

機動戦士ガンダム一年戦争全史 U.C.0079-0080 (上)

このシリーズ、学研の実際の戦史シリーズのパロディなんですね。
↓こんなの。
バルバロッサ作戦 (欧州戦史シリーズ (Vol.4))

バルバロッサ作戦 (欧州戦史シリーズ (Vol.4))

西方電撃戦 (欧州戦史シリーズ (Vol.2))

西方電撃戦 (欧州戦史シリーズ (Vol.2))

演義三国志―智略冴え猛将奔る群雄絵巻 (歴史群像シリーズ (83))

演義三国志―智略冴え猛将奔る群雄絵巻 (歴史群像シリーズ (83))

三国志ガンダムはもうオタク男子の基礎教養。

どっちも戦争の話で、多数の英雄が登場し、作品内で厚みを持った歴史がある。
片や歴史的事実を基にしたフィクション、片やフィクションなんだけどけっこうリアリティのある架空歴史になっているというもの。

だからその二つが合体して「ガンダム無双」が出るのも当然といえば当然。

ガンダム無双 - PS3

ガンダム無双 - PS3

三国志と日本の戦国時代戦国時代を合体させたこれ↓

無双OROCHI(通常版)

無双OROCHI(通常版)

はどうかと思うけど。まあ、カプコンとかのオールスター格闘ゲームのノリなんだろうなあ。


あと、最近出たガンダム本といえばこれ。

永遠のガンダム語録 (PHP文庫)

永遠のガンダム語録 (PHP文庫)

あの、もうネタになりまくっている名台詞が網羅。
とはいっても、元ネタ解説じゃなくて、識者の方々の短いエッセイになっている。
ちなみに、↓の本の文庫化。
永遠のガンダム語録

永遠のガンダム語録

物語作者・ゲーム企画者必携、パクれるネタの宝庫 『スタートレック エンサイクロペディア』


さて、ゲームシナリオイベントまで1週間を切り、シナリオ関係に興味を持っている方がこのブログを見ている方も多いのではないでしょうか。
せっかくの機会なので、シナリオ関係の話題を何度か書いていきたいと思います。

今回は、シナリオの書くテクニックというより、ネタ出しに役立つ参考書をご紹介しましょう。
テレビゲームやアニメのシナリオ、小説、マンガを書こうと思っている人、世界設定・キャラクター設定・アイテム設定・イベントなどを考えなければいけない、ゲームの企画・プランナーの方にオススメです。

イデアの出し方の本については、前回(→id:AYS:20061203)紹介しましたのでそちらをどうぞ。


あまり知られていませんが、物語のアイデア出し、世界デザインのネタ帳として最強なのが、この本。
「スタートレック エンサイクロペディア 完全日本語版 」

スタートレックエンサイクロペディア ニュー・エディション (スタートレックBOOKスペシャル)

スタートレックエンサイクロペディア ニュー・エディション (スタートレックBOOKスペシャル)

「少年ジャンプ」よりでかく、フルカラー794ページなのに、1万円以下という驚きの低価格。
歴代スタートレックの全エピソード(数百本)の概要と、登場した人物、惑星、道具、スタトレ世界の歴史など、載っていないことはない。
マジで情報量すごすぎます。(翻訳だけでどれだけコストかかってるんだ?)

↓本のでかさはWiiリモコンと比べれば一目瞭然。(ってまだWii見たことない人多いか。隣の黒いのが何なのかは、この本を読めばわかります)

↑よくある設定資料集に見えるかもしれませんが、これが700ページ続くんですからね。


id:ityouさんのよく言う、「誰かが概要をまとめてくれれば、自分で全部見なくてもすむ」の典型です。
(ちなみに、旧版が安く売られていたりしますが、旧版はオールモノクロで項目数も少なく、図版もほとんどないので、残念ながら買う価値はありません)


といっても、『スタートレック』をよくご存じでない方も多いでしょう。
偏見を持っている方も少なくないのでは?
実は私もそうでした。

やっぱりあの、「赤青黄色のパジャマみたいな服の人たちが、チープな特殊メイクの異星人となんか戦ってる、アメリカのオタクが好きなやつ?」というイメージですよねえ。

私も昔はそう思ってました。
そういうのって、日本では『ゴレンジャー』みたいな戦隊ものとかしかないので、いい大人の見るものではないような気がしてしまうのでしょう。

でも、欧米の映画やドラマを見ていると、ギリシア神話、聖書、スタートレックが基礎教養だというのがよくわかります。
知識人でスタトレファンも多いですし、子供だましドラマだと思うのは大きな間違い。


実は、スタートレックは単なるSFドラマではなくて、SFであることをいいことに、(そして、毎週毎週のテレビドラマなのでネタ切れを防ぐため)ありとあらゆる物語パターンを取り入れたなんでもアリの世界なのです。(近いのは、ドラえもんか?)

いろいろな個性を持ったキャラクターが旅をして、行く先々の街(星)で事件が起こる、というのも、西遊記型、駅馬車型などと呼ばれる、物語の典型のひとつです。

お手持ちのマンガなどでも、そうした形式のものがけっこうあるのではないでしょうか?
コンピュータRPGロールプレイングゲーム)がすべて西遊記型なのは、言うまでもないですよね。

日本のドラマで1話完結のものは少ないですが、(例外は『古畑任三郎』『相棒』などのミステリーものか)海外ドラマは一話完結のものが多いので、それだけ起承転結の作り方の勉強がたくさんできます。
(続き物は続き物で、「もっと先が見たくなる」引っ張り方を学べますけど)

スタートレックは、現実世界にある問題(人間関係の問題から、社会問題までなんでも)を、SFという装置を用いることによって、浮き彫りにするのです。
しかも単なるSFメカのドラマではなくて、未開の惑星や超能力星人など、ファンタジー的な要素もある。

そんなわけで、スタートレックシリーズが、何十年にも渡って、何十人何百人ものクリエイターによって創り出してきた膨大な設定の数々が載っているこの本は、架空世界構築・エピソード構築のネタ帳として最強なのです。

カラー図版もひじょうに豊富で、登場人物、アイテム、コスチューム、宇宙船、紋章デザインなどなど、眺めているだけでインスピレーションを与えてくれます。

ネタに困ったら、パラパラめくって読むだけで、パクれるネタ満載。
しかも、スタトレのエピソード自体、たいてい何かのパクリなので、エッセンスだけパクってもまず問題になりません。




たとえば、適当にめくると次のような記述があるわけです。

Jetrel, Dr.Ma'Bor[James Sloyan] 【マボール・ジェトレル博士】(ジェームズ・スローヤン)
ハーコニア人とタラクシア人の戦争中、2356年に強力な破壊力を持った兵器、メトリオン爆弾を開発した科学者。
この兵器は惑星ライナックスで使用され、30万人が死亡し、タラクシアは降伏した。
この兵器の開発は大成功だと思われたが、後にジェトレルはハーコニア社会から村八分にされていることに気づいた。
また、妻カリーと3人の子供たちにも出て行かれてしまう。
彼は自分のせいでライナックスに住む大勢の人が死んでしまったことに深く傷つき、罪の意識に苛まれた。
長い年月、ジェトレルは自分のもたらした結果を改める方法を探し続け、とうとう死人を生き返らせる再生融合プロセスを考えつく。
しかし、政府は彼の研究に興味を示さなかったため、2371年、ヴォイジャーに乗り込むふりをし、船のテクノロジーを使って再生技術を実行しようとした。
試みは失敗に終わるが、その最中にタラクシア人のニーリックスは、ジェトレルが死に追いやった人たちに対して心から償いたいと思っていることを痛感する。
その後まもなく、ジェトレルはメトリオン爆弾に被爆していたためメトレミア(日本語版→メトリオン病)で死亡した(『殺人兵器メトリオン』[VGR])。

(p.222)

これは、『スタートレック ヴォイジャー』の1エピソード(45分程度)の内容です。このキャラは1回出てきて終わりのキャラでしかありません。
よほどのマニアでなければ、スタトレ好きでも覚えていないようなキャラです。


しかし、「過去に虐殺を行ったものが罪を悔いて、殺した人々を蘇らせようとする」という、この45分エピソード、RPGの骨格的な設定になりそうじゃないですか?

もちろん、これをそのまま全部パクったら、盗作者の十字架を背負って生きていかなければなりません。
でも、部分的にパクれる要素がいくつもあったのにお気づきでしょうか?

  • 「死人を生き返らせる再生融合プロセス」ってなんじゃそりゃー! という感じですが、RPGのラスボスがやろうとしていることとかにできそうですよね。「30年前の“大崩壊”で死んだ××国の人たちを生き返らせるために、○○国の人々の命をいけにえにする!」とか
  • 主人公の側の施設を奪って何かをやろうとしている敵。でも敵の真の目的は、主人公側の人々を救うことだった……なんていうのも、何かに使えそう。
  • ニーリックスは、ここではいわゆる「ヒロシマの生き残り」みたいなキャラなわけですが、RPGの主人公(あるいは主人公の仲間)キャラで、自分の肉親や友人を虐殺した敵の司令官や科学者を恨んでいて、そいつを追い掛け回すが、最後には赦す……なんて、『ファイナルファンタジー12』にありませんでしたっけ?
  • 自分の作り出した爆弾の副作用で死んでしまう科学者……この皮肉な結末も何かに使えそうです。

と、ほら、部分的に抜き出すだけで、いくつもストーリーが作れるのです。
こんな項目が、大小合わせて9000以上ですからね。ネタは尽きません。



全ゲーム企画者、物語作者必携でしょう。一生モノの一冊です。


ただ、スタートレック世界の基礎設定は、他で読んで知っておいたほうが読みやすいかもしれないですね。
この辺の本とか。

スタートレック パラマウント社公認 オフィシャルデータベース

スタートレック パラマウント社公認 オフィシャルデータベース

スタートレック全シリーズ完全ガイド (別冊宝島)

スタートレック全シリーズ完全ガイド (別冊宝島)


あと、スタートレックのストーリー(あらすじ)をパクるという話だと、ネット上によい日本語のエピソードガイドがあります。
『エンサイクロペディア』の方が、適当にめくることができるので、アイデア出しに向いているのですが、優良エピソードだけ知りたいなら、ネットの方が便利。
(でも、優良だけに有名なので、パクるとバレやすいです)

おすすめのコースはこちら。

まず、このページ
Star Trek: U.S.S. Kyushu - Episode Promenade
http://www2.g-7.ne.jp/~kyushu/epi/
の「各シリーズの情報へ」のところの、「平均点順 総合点順 」のリンクで、評価が高いエピソードを見る。

「エピソードの情報へ」をクリックして、
さらに左上にある「EPISODE GUIDE」のバナーを押すと、オチまで書いてあるあらすじが読める。

書き手が異様に力を入れていて、ほとんど全起こしになっているものもあり、力作なのはわかるけれども、そういうのは逆に「もっとまとめてくれよ」という気もするのですが。
TNGなら、こっちの方がまとまってていいかも。
Boldly Go... ST TNG エピソードガイド WWW edition
http://www2u.biglobe.ne.jp/~mayuzumi/startrek/tng_guide/epi.html


ヴォイジャーDS9TNGTOSの順に新しいです。
人気度はともかく、一般に新しい方がストーリーも洗練されている場合が多い。
(たとえばヴォイジャーにはTNGで荒削りだったシナリオをパクって洗練させた話とかが出てくる)

実はエンタープライズ(ENT)が最新作なのですが、初代スタートレック(TOS)より過去の話、という時代設定にしてしまったので、ホロデッキがないとか、技術的に後退してしまい、あまりSFなんでもあり話になっていないのです。
そんなわけもあって、ENTはスタトレ史上(初代を除いて)初めてつまらなくて7シーズンをまっとうできなく、シーズン4で打ち切られた作品なのでした。

興味が湧いたら、DVDなどで見てみるといいでしょう。
ただ、ハズレエピソードも多いので、面白いと上記サイトで評判の話から見始めることをオススメします。

ちなみに私のベストエピソードはヴォイジャーの『700年後の目撃者』。民族紛争と歴史観をテーマとした話です。
これはオチが素晴らしいので、映像で見ないともったいないだろうなあ。
文章で先に知っちゃうと、あの神演出を素直に味わう幸福を得られなくなってしまうでしょう。

スター・トレック ヴォイジャー DVDコンプリート・シーズン 1 コレクターズ・ボックス スター・トレック ディープ・スペース・ナイン DVDコンプリート・シーズン 1 コレクターズ・ボックス 新スター・トレック シーズン1 Vol.1 [DVD] 宇宙大作戦 DVDコンプリート・シーズン 1 <コレクターズ・ボックス> スター・トレック エンタープライズ DVDコンプリート・シーズン 1 コレクターズ・ボックス

ガンダム『評伝シャア・アズナブル』と架空に学ぶ本


皆川ゆか『評伝シャア・アズナブル赤い彗星》の軌跡』というのが出るようですね。

評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 上巻 (KCピ-ス)

評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 上巻 (KCピ-ス)

評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻 (KCピ-ス)

評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻 (KCピ-ス)

ここに詳しい。↓ITmedia News:シャアに学ぶ「男の生き方」 新書で一代記http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0611/10/news010.html

架空の人物を、実在の人物のように論じる試み。
新書で各600円、という設定が上手いですね。


著者は、究極のガンダム百科を書いた方ですね。この本、ほしいんですが高くて買えない……。

機動戦士ガンダム公式百科事典―GUNDAM OFFICIALS

機動戦士ガンダム公式百科事典―GUNDAM OFFICIALS

GUNDAM Q101―『機動戦士ガンダム公式百科事典』完全対応副読本!

GUNDAM Q101―『機動戦士ガンダム公式百科事典』完全対応副読本!


ガンダムを史実として扱う興味深い試みとしては、多根清史さんの『機動戦士ガンダム研究叢書 宇宙世紀の政治経済学』という本もあります。

機動戦士ガンダム研究叢書 宇宙世紀の政治経済学

機動戦士ガンダム研究叢書 宇宙世紀の政治経済学

著者の方のブログ

アニメのガンダムを基に、こういうテーマを論じるというのはどうなんだ? と思う人がけっこう多いと思うんですが、
プレジデント社とかダイヤモンド社とかで、「戦国武将とか三国志に学ぶビジネスの秘訣」みたいなのがよくありますよね。
結局、それと同じだと思います。


戦国武将だって三国志の武将だって、モデルは実在の人物とはいえ、ほとんどフィクションのエピソードが流通していて、それを元に論じてるわけですから。


実用書の本場、アメリカとかではこういうのは多いのかもしれません。
スタートレックピカード艦長とかに学ぶ、人の上に立つ人間の資質を論じた本があって、邦訳されています。
(訳者はもっとも有名なスタートレックエバンジェリストの一人、岸川靖さん)

スタートレック指揮官の条件

スタートレック指揮官の条件

これも出版はダイヤモンド社ですね。

オタク世代がビジネスで活躍するようになって久しいので、今後こうした本はどんどん出てくるかもしれません。

機動戦士ガンダムDVD-BOX 2

機動戦士ガンダムDVD-BOX 2

ちなみに、シャア・アズナブルの名前の元ネタとなったと思われる、シャルル・アズナブールさん↓

グレイテスト・ヒッツ・フォー・ジャパン

グレイテスト・ヒッツ・フォー・ジャパン

ベスト・ソングス&ライヴ

ベスト・ソングス&ライヴ

新世紀エンタメ白書 2007

まんたんブロードの原稿が再録されたムックが年末に出るというのは、これだったのか!

新世紀エンタメ白書 2007 (毎日ムック)

新世紀エンタメ白書 2007 (毎日ムック)

<内容>
 (1)<06年エンタメ コンテンツペスト>
   ⇒ 「涼宮ハルヒの憂鬱」、「DEATH NOTE-デスノート-」
 (2)対談:よしながふみ×桜庭一樹
 (3)<マンガレビュー>
 (4)<ブックレビュー>
 (5)<インタビュー>天樹征丸、千秋孝一
 (6)<アニメレビュー>
 (7)<ゲームレビュー>
 (8)<インタビュー>坂口博信
 (9)<イラストギャラリー>いとうのいぢひびき玲音

(http://www.animate-shop.jp/webshop70/commodity_param/ctc/book/shc/0/cmc/4054500/ より)


渡辺圭さん渾身の1冊。
この仕様で800円というのは安いなー。さすが毎日新聞社
ハルヒ」「デスノート」特集、よしながふみのインタビューとかあるし、十分元は取れますね。

151本レビューということで、私の原稿も再録されているはずなので、ぜひご購入を。
ちょっと書店では買うのが恥ずかしい表紙なので、通販の方がいいかも。(と、さりげなくアフィリエイト誘導)