『風光る』の渡辺多恵子が、大河ドラマ『新選組!』の三谷幸喜を批判

三谷幸喜」のキーワードで来る人が多いのでちょっと見てみたら、けっこう前に新選組漫画『風光る』の作者渡辺多恵子が、大河ドラマ新選組!』の三谷幸喜をウェブで批判して、三谷が新聞の連載コラムで応えるという騒動があったんですね。知らなかった。(情報源:http://d.hatena.ne.jp/THX/20040317

発端となったコラムはすでに閲覧できなくなっているようなのですが、プロの表現者である以上、一度世に出してしまった表現が引用されるのは当然覚悟していると思いますので、ミラーより引用。
http://dempa.2ch.net/prj/page/maruko/t13.html
ドラマのどの辺が(というよりキャラクターの解釈と描き方が)気に入らない、という部分は個人の感想なので特に問題ないと思います。特に問題となっているのは下のくだりでしょう。

 素直に、ただ面白くなかった…(泣)。
 このドラマを純粋に楽しんでいる『風光る』ファンもかなり大勢いると思います。 そうしたお手紙も沢山頂きました。 それなのに何故私が楽しめなかったか。 それはやはり私が<プロフェッショナルのエンターティナー>だからに他なりません。
 ご承知の通り、私は25年のキャリアを持つ娯楽マンガ描きです。 その観点から新選組!』をたとえると、<めちゃくちゃ絵の上手い同人作品>なんですね。 つまり<プロ>のレベルじゃないんです。
 もしここに新選組の同人誌があったとして、その内容が史実完全無視の、時代考証あさっての、キャラ設定矛盾だらけであっても、絵がめっちゃくちゃ上手くて、自分の好きなキャラクターが自分好みの美形に描かれていれば、とりあえずはみんなは楽しく読めるでしょう? ましてやそれがタダで見られるとあれば、是も非もなくみんなOKを出すよね。 まさにそれが今回の『新選組!』だと思うんですよ。

若いマンガ家さんなので、「同人」というのを決して見下げた意味で使っているわけではないのかとも一瞬思いましたが、25年のベテランだそうですし、「<プロ>のレベルじゃない」って書いているのでやっぱり侮蔑の意味を込めているようですね。

 私は<エンターティナー>を自称する限り、その作品は万人に向けられたものでなければならないという信念を持っております。 そして当然NHK大河はエンターティメント枠です。 その意味で三谷氏は「新選組ファンの目を意識し過ぎてしまった」感を激しく受けますね。 これはハッキリと失敗だと思います。
 何故歴代の新選組マンガが打ち切りの浮き目にあい続けたのにも関わらず、『風光る』だけがこんなに長く続いているのか?…不思議に思っている方も多いと思いますが、その秘密はまさにここにあると、私は分析しています。
 『風光る』は、新選組ファンに向けて描いていないのです。 むしろ新選組や歴史に感心のない人をメインに据えて描いている。 だから読者層を選ばず誰にでも入りやすいし、誰にでも楽しんでもらえる作品になったんです(当然の事ながら、新選組ファンより新選組ファンでない人の方が世の中には大勢いますからね。/笑)。

三谷さん、役者のビジュアルにおんぶしてないで、ちゃんと描いてよってば(偉そう?でも私の方が先輩だも〜ん。エンターティナー作家としては。/笑)! こんな新選組じゃ、かえって嫌いになる人もいると思うんで、ホントに頼みますですよ。

うーん、かなり居丈高というか、エラソーな物言い。
もともとこういう人なのかと思ったのですが、この文の冒頭でも書いているように、前回のコラムhttp://dempa.2ch.net/prj/page/maruko/t12.htmlを読むと、『カドカワムック・NHK大河ドラマ新選組!」』に捏造インタビューを載せられたのに怒り心頭のご様子。たしかに捏造インタビューはいかんが、どうもこの人は杜撰なムックを編集した編プロに向けるべき怒りを(角川書店には責任の一端はあるにしろ、NHKですらない)、三谷にまでぶつけているようだ。しかも自分で気づいてない。これはいただけない。

で、このミラーのページhttp://dempa.2ch.net/prj/page/maruko/にはいろいろまとめがあるのだが、同じコラムのさらに前の回。
http://dempa.2ch.net/prj/page/maruko/t11.html

 悪いけどね、「作品は作家のモノ」ですよ。 「こうした方がもっと面白い」と思うアイデアがあるなら、それはあなた自身が作品にすればイイ事であって、その才能のない人間には、甘んじて作家が提出してくる作品をただ受け取る、それしかできる事はないのです。 そしてそれが面白くなければ見るのを止めればイイし、面白ければ「面白かった!」と喜んで毎週見ればイイだけの事。 どうして「新選組はこうあるべきだ!」みたいな既存の固定観念を、新しく生まれようとする作品に押しつけようとするのか、本当に私にはわかりません。

まあコミックスが売れているという事実から、先生は才能のある人間であることは疑いのないことですので、間違ってはいないんでしょうが、やっぱり態度が強気だなー。
岡田斗司夫は「才能がある人間/ない人間」の2タイプに分けて考える人を「軍人タイプ」と呼んでたと思いますが、この人もそれか。

 作家にはそれぞれに信じる哲学や視点があって、その違いこそが個性となって面白い作品を生み出すものなのに、視野の狭い連中って、とにかく自分らの共通概念の中の新選組像から外れようとするモノは闇雲に弾圧しようとするんだよね。 私なんかはまだ、ただの売れない漫画家だから手紙しか来なくてよかったけど、「TVとなると大変だなぁ、署名運動までされちゃうんだなぁ。」と、心の底から三谷さんを気の毒に思いました。
 もちろん三谷さん程の人がそんな訴えにひるむ訳がないとも思っていますので、どうか彼には存分に、彼の思うままの新選組近藤勇を描いて欲しいと心から願っています。 私はどんな新選組でも受け入れますからね、三谷さん! そのかわりつまらなかったら2度とは見ません(笑)。 

先生、矛盾しまくってるよ!
どうやったら(冒頭に紹介した)後の回のコラムで

初回を見て私は「こんな近藤勇は嫌いだ!」と思ったんですよ。
またトシも情けなさこの上ない!
それから総司。私のもっとも嫌いな総司像でガッカリです…(泣)。
とにかく、私はこんな近藤勇土方歳三沖田総司も好きになれない、というのが結論。

なんてセリフが出てくるんだ。受け入れろよ! まぁ『竜馬におまかせ!』を受け入れて楽しく見ていた私がツッコんでも説得力ありませんが。

で、三谷幸喜の新聞での返答がこれ。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Studio/4224/shinsengumi/image2/column_02.jpg
ネットではこの三谷のコラムを「オトナの対応」とか評して誉めてる人が多いけど、単にたぶんネタ出しが毎回大変な連載コラムのネタとして使ってみただけのような気がするけど。
たしかにムキになって反論してないのはオトナだが。でも内心すごく悔しいんだろうなあ。http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20040326#p1さんも書いているけど、絶対根に持ったに違いない。(笑)
で、三谷はこういうことも書いてる。

視聴率は、ここだけの話だが、やや下がり気味。やはり今まで大河を観続けていた年配の人には受け入れられなかったようです。
 視聴率は正直、それほど気にならないが、注目度の高い大河ドラマだけに、数字が下がるといろいろ言われてしまう。

「やはり」って言うな! 放送前は大河ドラマファンに「これが大河ドラマだ」と納得してもらえるような内容にするとかいうような意味のことをさんざん言っていたじゃん(たとえばこことかhttp://www.nhk.or.jp/taiga/mitani_m.html)。
視聴率を気にしろとまでは言わないが、「それほど気にならない」って公言するのもどうかと思う。

そんな私は『新選組!』けっこう好きです。大絶賛までいかないけど。DonDokoDon永倉新八いいね。
風光る』も機会があれば読んでみたい。いまのところ史実における新選組自体には多少の興味はあるものの、まったくヒロイズムを感じていませんが。

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