Grand Hotel-style

よしながふみ西洋骨董洋菓子店』を読んだ。面白かった。
4巻で完結なのか。潔いなあ。引き際をわかってらっしゃる。浦沢、見習え。でも8巻はぐらい続けてもよかったんじゃないか?

以前、http://d.hatena.ne.jp/AYS/20040314 夏目房之介さん・藤本由香里さん・伊藤剛さんらが絶賛されていたので、同じ作者の『愛すべき娘たち』を読んだ。
面白いことは面白いし、たしかに巧いなあ、とは思ったんだが、自分は男性であるし、人生経験がまだまだ浅いこともあって、その人生の機微を描いた内容に浸りきることはできなかった。とてもよいマンガだとは思うけど、好きなマンガというのとはちょっと違う、という感じ。

西洋骨董洋菓子店』の方は『アンティーク』というタイトルでテレビドラマ化されたのは知っていた。見なかったが、実家の母が見ていたという話を聞いた。
その頃は、どうせイケメンがいっぱい出てきてやおいっぽくて、ケーキ好きの女性読者はいい男とおいしいケーキを両方楽しめる、そんな話なんだろう、という程度の認識しかなかった。ごめんなさい。
まあイケメンがいっぱい出てくるし、やおい要素は満載なのだが、やっぱりこの人、構成が実に巧い。「えっ、あのエピソードって、この伏線だったの?」「えっ、あの人物が、こう繋がるの?」と、忘れた頃に要素要素がリンクするのに驚かされる。伏線好きの私にはなんとも至福である。

1巻を読んだ段階では、ケーキ屋を舞台に、そこを訪れる人々の人生を描く内容なのかと思った。ケーキ屋のイケメンたちは狂言回しに過ぎないのではないかと。
その点、客はあくまで他人であり、レストランの従業員たちが主人公のドラマ『王様のレストラン』や佐々木倫子HEAVEN?』なんかとは逆パターンの話だなあ、と思った。
ところが巻が進んでいくと、そうでもないのである。ケーキ屋のイケメンたちは単なる狂言回しなのではなかった。客の人生も描かれるが、最終的には従業員たちの人生に着地する。
この辺は、『愛すべき娘たち』にも共通する趣向だろう。

実は、月末の研究会のために読んでいるのである。夏目さんもこう書かれている。
http://www.ringolab.com/note/natsume/archives/001567.html

ところで、月末に、ある研究会でよしながふみ西洋骨董洋菓子店」のコマ構成の分析を発表するので読んでいるのだが、あらためて感心する。
 見事である。当面、よしながを読み返す。

夏目さんのコマ構成分析を聞けるのか。楽しみである。


ところで、ケーキの説明をはじめ、このマンガはセリフの量がとても多い。ケーキの説明などは全部読めということではないのだと理解して、あえて飛ばし読みをしたのだが、一般の女性読者はどう読んでいるのだろうか。研究会の際、機会あがれば聞いてみたい。

よしながふみファンサイトhttp://yoshinagafc.web.infoseek.co.jp/

池袋西武にあるリブロのマンガコーナーに、男の子も読める少女マンガコーナーというのができていて、その中に『西洋骨董洋菓子店』もあった。ゲイ描写も多いので1巻だけだと微妙だと思う。
ちなみにそのコーナーに他に置いてあったのはうろ覚えだが、『NANA』『のだめカンタービレ』とかだったような。
『のだめ』読みたいな。