dilemma

キリコさん「ゲームとしての物語―2.駒とアビリティ(能力)の設定―」http://red.ribbon.to/~kiriko/rule2.htmについて(2)

 しかし、物語の最後、ガタイのいい小学生に囲まれ、のび太は窮地に陥る(サスペンスの発生)。ここでのび太が窮地に陥る理由は、のび太に「喧嘩が弱い」というアビリティが与えられているためである。この時点で、ルール上に以下のようなルートが発生する。
 (1)「呼び出しブザー」でドラえもんを呼び出さなければ、殴られる。が、ドラえもんにバカンスを提供できる。
 (2)「呼び出しブザー」でドラえもんを呼び出せば、窮地を脱することが出来る。が、ドラえもんのバカンスをぶち壊す。
 どちらを選んでもバッドエンドになってしまうこのシチュエーション。

この話は少なくとも3回ぐらいした覚えがあるのだが、また紹介しておくと、心理学で葛藤(コンフリクト)を3つに分類するというポピュラーな話がある。
(1)接近-接近コンフリクト……どっちもやりたい カレーも食いたいがラーメンも食いたい
(2)回避-回避コンフリクト……どっちもいやだ 働くのは嫌だが贅沢できないのも嫌だ
(3)接近-回避コンフリクト……良いことと悪いことの両方がおこってしまう 公金横領できそうだがバレるかもしれない
どちらか好きな方をやろう。ウンコ味のカレーかカレー味のウンコか。生きるべきか死ぬべきか。自らの命を犠牲にしてあいつを救うべきか。ロミオは好きだが親が。判断に迷った場合、まず上のいずれかのパターンである。
通常、ここで収支計算が行われ、黒字になる方を選択する。踊る阿呆に見る阿呆なら踊る阿呆が黒字。聞く一時の恥と聞かぬ一生の恥なら一時の恥がお勧めとか。
しかしフィクションにおいては収支がどちらともいえない、または予測できないほうが当然面白い。明らかに黒字なら成功が確信されてつまらないし、明らかに赤字ならその馬鹿な登場人物に怒りを覚える。
とにかく、登場人物にこの葛藤に陥らせると、どう判断し、どう解決するのか、という「見もの」が生まれる。
なぜ人は他人の決断を見たがるのか。自分が将来同じような状況に陥った場合の参考にしたい。自分が過去同じような状況に陥った際の判断を採点する判断材料にしたい。愚かな決断を見て自分が優れていることを確認して優越感に浸りたい。など、いろいろ理由は考えられる。
あるいは、まるで自分がその人物本人かその身内になったかのような錯覚を覚え、自分や親しい者が幸福になって欲しいと無意識に願うからかもしれない。やや脱線した。

HUNTER×HUNTER』において、「世界随一の念能力者」というアビリティを持つネテロに、「あいつ、ワシより強いんじゃねー?」と言わせることで、ネフェルピトーの強さを読者に納得させることは出来る。

http://d.hatena.ne.jp/AYS/20030824の下のほうの「し、知っているのか、テリーマン」参照。