異議あり!

逆転裁判3』をやっとクリア。以下、ミステリーとしてのネタバレにならない程度に感想を書きます。(が、未プレイの人にはやっぱり先入観になっちゃうのでよくないかな?)

後で不満点を書きますが、『2』が駄作ではないにしろ、『1』に比べるといまいちという感じが否めなかったのに比べ、『3』はかなり健闘しています。総合的に見れば、ある意味で『1』を越えているか、少なくとも比肩していると思います。もちろんプレイして損はありません。
ボリュームは相当多いです。私は当然なるべく全部のテキストを読もうとしながらやったのですが、『2』のときの2〜4倍はあったような気がします(あくまで主観的に)。「ゆさぶる」とかあまりやらなければもっと短いのかな。uelさんはどうやって1日でクリアhttp://d.hatena.ne.jp/uel/20040123したのか。
今回、シナリオがかなり練られています。『2』のときは全体的にイマイチな感じがして、『3』も1・2話も似た印象を受けたのですが、3話以降はかなり唸りました。しかしこれだけ複雑な事件、小学生プレイヤーの皆さんは理解できるんでしょうか?


しかしながら、ゲームとしての楽しさは『1』に比べると大幅に劣ります。
私は以前、『1』を評してhttp://www.intara.net/og/gyakuten.shtml

そこで主人公はプレイヤーの言いたいことを忠実に(!)代弁する。
痛いところを突かれ、狼狽する証人。
これが「バシィィン!」といった感じで、格闘ゲームのようなエフェクトと効果音で演出される。
音楽も変わり、弁護側の形勢が有利となったことを物語る。
プレイヤーは、自らの推理と選択によって、法廷という空間を自分のものとしたことを体感するのだ。
この、推理することによってゲームを進めているという実感に起因する快感は、これまでの推理ものゲームでは決して得られなかったものである。きわめて秀逸な演出だ。

と書きました。
キリコさんも、http://red.ribbon.to/~kiriko/game1.htm

この、思考→解明というフローこそが、「逆転裁判」の醍醐味であり、快感なわけです。ゲームは巧みなサウンドエフェクトを用い、プレーヤーの快感を演出してくれます。
プレーヤーの快感。
この、全てのゲームにおける根源的な醍醐味を提供するために、「逆転裁判」は事件の難易度を切り下げました。誰でも考えれば解ける事件。

と書かれています。しかし、『3』では謎は必要以上に難しい。
おそらく『1』の頃から簡単すぎる、という意見が多かったためでしょう。
「難しい」理由は、2種類あります。どちらも、プレイヤーに対する情報開示量が適切でない理由によります。
まず、発想が突飛なこと。情報が少ない状態で、いきなり製作者が期待する回答を要求します。こういった例は次の理由に比べれば少ない。
次に、プレイヤーはトリックがわかっているのに、製作者が期待するタイミングで期待する証拠品を提示しなければならないという点。
この辺は『2』のときから出てきた欠点で、やはりキリコさんも指摘されています。http://red.ribbon.to/~kiriko/game3.htm

逆転裁判1」は事件の難易度を極端に切り落とすことで、「子供でも考えれば解ける謎」というゲームバランスを忠実に実現していました。
しかし「逆転裁判2」はこの辺のチューニングがユルユルです。難易度高すぎ。しかも、「難しいけれど必死に考えれば解ける謎」ではなく、「考えても解けない謎」が多すぎて非常にストレスがたまります
手がかりが少なすぎる、こっちが立てた仮説にゲーム側が全く反応してくれないなど、「謎解き以外の難易度」が鬼のように高く、ほとんどコマンド総当りゲームに成り下がっている感もあります

poncholさんも書かれています。http://d.hatena.ne.jp/ponchol/20040130

で、2も買っちゃったんですが。世間一般ではおおむね好評らしいんですが、私的には「やっぱり1の方が面白かった」と思うんですけどねえ。
1の時は「簡単すぎる」とかいう声が多かったらしいんで2は難しくしたようなんですが、私から見て「難しくなったんじゃなくてアンフェアになった」という印象しかないんですよねえ。
アンフェアという言葉はちょっとしっくり来てないんですが、要するに話の内容とそれのばれ方が飛躍、というか独り善がりな感じがするんですねえ。
1の時は誰でもわかるように超簡単にしてあったため、謎とヒントとその答えが近い感じがあり簡単な演繹で導き出せたので答えを聞いたときに「ああ、なるほど」と思えたのですが、2だと「難しくしなくては」ということでバレないようにするあまり、謎に無理があり、ヒントはあまりに不自然に出され、答えを聞いても「ご都合的すぎるがまあ作者がそう言い張るならぎりぎりありえなくはないので勘弁してやる」ような話に終始するようになりました。
言い方を変えると2はよりシナリオを難しくしようと捻ったのでプレーヤーがより細部まで入らないといけなくなったせいで細部のあらがより目立つようになった、ということですかねえ。

「ほとんどコマンド総当りゲームに成り下がっている」
「難しくなったんじゃなくてアンフェアになった」
逆転裁判2』に対する批判ですが、やや言いすぎのきらいはありますが(実際、おふたりもやや言いすぎかも、と思われているようで、その辺のニュアンスは前後の文脈を読んでいただきたいのですが)、私も同意です。この方向性がさらに進んでしまったわけです。
実際、正直『3』ではコマンド総当りで解かざるをえなかった局面が私には何度かありました。
もちろん、これはあらゆる意味で『逆転裁判』の一作目が名作であったためです。仮に『2』『3』の難易度で『1』が出ていたとしたら、それをスタンダードだと感じてしまい、『1』の難易度の続編が出たら「簡単すぎ」と叩いたかもしれません。

話を戻します。『3』では、おそらく難易度を上げるため選択肢となる証拠品の数がとても増えています。そのため、証拠品A・B・Cがそれぞれ相互に矛盾しているといった状況が出てきます。この場合、A・B・Cのいずれを提示しても矛盾の説明になりそうなものですが、なぜか製作者はBだけ期待して、A・Cは認めないというような設計をたびたび行っています。この場合、本来AとCが矛盾しているという状況を設定してはいけないか、あるいはAとCが矛盾しているという情報を隠しておく必要があります。しかし、一度にA・B・C全部の証拠品をプレイヤーに提供してしまい、恣意的にBだけ提示させるという失敗をたびたび行っています。
伊藤悠さんが『1』について「逆転裁判でも何箇所かに、情報提供管制の失敗がみられる。」と書かれていますがhttp://homepage1.nifty.com/~yu/game/adv.html#gs、『3』での情報管制の不手際は『1』『2』の比ではないと思いました。
プレイヤーは釈然としないまま当てずっぽうあるいはコマンド総当たりで正解の選択肢を選び、後はなるほどくんが勝手に説明してくれます。『1』の頃にあった確信に裏打ちされた選択と、プレイヤーの推理を忠実に代弁するなるほどくんという、プレイヤーとプレイヤーキャラクターの一体感は微塵もありません。

問題なのは、これはただ単に謎解きの快感を味わいにくくしているだけではないことです。
『1』の頃は証拠品も少なく、情報開示量(ヒント)が大目だったので、確信をもってどんどんテンポよく法廷劇を展開させることができました。
しかし、『3』ではせっかく盛り上がってきたのに、上記のような「プレイヤーには全部わかってるのに『つきつける』パズルを解けない」という状況がたびたび飛び出し、そこで詰まってしまい、テンポを崩して爽快感がそがれています。
また改めて書きますがhttp://d.hatena.ne.jp/AYS/20040129、今回かなり事件は暗く、そして重いのです。だからこそ、法廷での爽快感をしっかりと演出してしてほしかったところなのでとても残念です。

作者は、「読者が事件の謎を見抜けるようなミステリーは、よくないミステリー」という先入観に支配されてしまったのではないでしょうか。
しかし「逆」です。キリコさんが書かれたように、ゲーム『逆転裁判』においては、謎は簡単でなければならなかったのです。
小説・マンガや映像作品における受け手は傍観者です。だから種明かしがなされるまで謎は見抜けない方がよい。
しかし『逆転裁判』というゲームにおいては、謎を解くのはプレイヤー自身なので、謎は受け手が見抜けるものでなければならないのです。
その「逆転」の発想こそ、一作目『逆転裁判』が名作となった理由だったのです。違いますか、被告人?

・『逆転裁判』の巧いところはこの日付のコメント欄でも語っています。http://d.hatena.ne.jp/AYS/20031130

・他の方の批評・感想リンクメモhttp://d.hatena.ne.jp/pastoral/20040130 http://d.hatena.ne.jp/nintenten/20040130 http://d.hatena.ne.jp/katzendr/20040202
http://d.hatena.ne.jp/kazuyohi/20040204
http://plaza.rakuten.co.jp/fromearthtomoon/diaryold/20040201/
http://d.hatena.ne.jp/Hugh/20040203