特高の恐怖に作家がおびえる時代がまたやってくる?

たけくまメモ著作権】とんでもない法案が審議されている
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_b72f.html

知りませんでした。
これまでは、著作権法違反は親告罪なので、
誰かが著作権違反っぽいことをしても、著作者が「俺は別に気にしないよ」という態度であれば、大丈夫だったんですが、この通りになると、警察が勝手にタイホできるようになるらしい。

一応、海賊版対策が念頭にあるようですが、ネットでの反応は、やはり同人誌の世界やネットでどうなる、というところのようです。

痛いニュース(ノ∀`)「著作権法非親告罪化」で“同人作家”等に深刻なダメージか
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/977113.html


でもそうなると、プロの作家も安心してはいられなくなります。
作品を作るには何らかの資料が必要だし、作品が昔に見た何かに無意識に似てしまうことだってあるからです。

この件で私が思い出すのが、スラムダンクトレース事件です。

末次由紀『エデンの花』(講談社)のバスケットボールシーンが、井上雄彦スラムダンク』をトレースしたという疑惑が生まれ(→検証サイト)、
講談社側の配慮によって末次作品は絶版、なかったことにされたということがありました。

エデンの花 (1) (講談社コミックスフレンドB (1212巻))SLAM DUNK(スラムダンク) 完全版 全24巻・全巻セット (ジャンプコミックスデラックス)

しかしその後、当の井上氏の作品だって、写真からの無断トレースだったのではないか、という疑惑も言われました。→検証サイト

この件で考えられるのは、あくまで憶測ですが、井上氏は特に末次氏のトレースに関して別に気にしていなかったのではないか? ということなのです。

しかし、ネットで指摘した人が現れ、講談社の判断で末次氏の作品は葬られてしまいました。

井上氏が本当に権利を侵害されていると不快にに感じていたとしても、まず末次氏と話し合って、もっと別の解決策はあったのではないかと思うのです。
三者である出版社が「すわ、盗作だ!」「『バガボンド』を描いてもらっている井上先生を怒らせたら大変だ!」と過剰反応したために、作品を葬り、一人の作家を活動中止に追い込んでしまった(現在はなんとか復活したそうですが)……のではないか? と考えられているようです。

法律になって拡大解釈されると、警察のような第三者が同じようなことをするケースが増えて、自由な創作が難しくなる可能性は高いのではないでしょうか。

いつ警察が逮捕に来るかとビクビクしながら作品を描く世界。特高におびえて小説を書いてた時代の再来ですか?

著作者の権利を守るための著作権法なのに、作家がビビって作品を作れなくなるなんて本末転倒ですよ。



ところで、著作権を侵害(?)された方は、別に訴えるだけが方法じゃないんですよね。

「違法動画、訴えるか利用するかは権利者しだい」、ひろゆき
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2007/05/11/15676.html

対して西村氏は、「レッツゴー!陰陽師の場合、勝手にユーザーが動画を公開して楽しんでいたら、ゲームの製作元から、CDが突然売れ始めたということでコンタクトがあった。そこでDVDを発売するまでに発展した。その例を見るとビジネスの可能性はある。著作権違反は親告罪なので、訴えてストップするのか、ビジネスにするのかという選択肢はコンテンツホルダーにある」とした。

新豪血寺一族-煩悩解放-(DVD付)

このひろゆき氏の見解の方が、時流に即していると思います。

このように、著作権侵害で訴えるよりも、それに乗じて商売しちゃおう、という方が賢い場合もあるわけです。
「別にその辺はパクってくれても別にいいよ」「うまく利用して商売しよう」「話し合って賠償金をもらおう」とか、そういうオプションが著作者に残されるべきだと思う。


まあ、さすがにここまでの盗作になると抹殺されてもしょうがない(グロマンガ注意)気がしますが……。

伊藤潤二恐怖マンガCollection (7)

「どこまでOK?」迷ったときのネット著作権ハンドブックマンガと著作権―パロディと引用と同人誌と (コミケット叢書)著作権に気をつけろ!―小説・論文・漫画・キャラクター・写真・映像・ホームページ 著作権トラブル110番「パクリ・盗作」スキャンダル読本 別冊宝島 1257

●5月23日追記
「過剰反応しすぎ」という意見もあるようですね。言葉が足りなかったかな。

でも、ひとたび法律というかたちになっちゃうと、いいように拡大解釈されて、空気の読めない警察とか、JASRACみたいな利権団体に利用されちゃう可能性があるわけですよ。


「今回の話は海賊版の話だから大丈夫」とか言っている人もいますが、同人誌(二次創作と呼ばれるもの)を、警察が海賊版だと判断しないという根拠は?
「同じキャラクターを使って、似たような話を作っている。海賊版だ!」と言えば済む話ではないですか。


「逮捕されても裁判で負けるわけがないから大丈夫」とか言っている人もいますが、それは逮捕されたことがないからそんなことが言えるのです。
……いや、私もタイホされたことはないですけど。

同じようなことを言われていたWinnyの作者がどうなったのか、もう忘れたのですか。

最終的に無罪になっても、拘留されただけで、マスコミに報道されて世間からは犯罪者のレッテルを貼られるし、勤め先はたぶんクビになるだろうし、囚人となった心の傷はなかなか癒されないと思います。
あと、個人が裁判するのはお金も労力もかかって、大変ですよ。

→冷静なまとめ
http://d.hatena.ne.jp/ululun/20070522/