元「フライデー」「週刊現代」編集長、現「週刊文春」編集長、現「新潮45」編集長によるトークセッション

元「フライデー」「週刊現代」編集長、現「週刊文春」編集長、現「新潮45」編集長によるトークセッションがあるということで、池袋ジュンク堂に行ってきました。
テーマに興味があったということと、単に雑誌の編集長というのはどういう人なのだろうという好奇心から行ったのですが、大変刺激になりました。



元木昌彦中瀬ゆかり、鈴木洋嗣「第八回 元木昌彦のノンフィクション養成講座」11月16日(木)19時〜
http://henshusha.com/top-main.html

ジュンク堂 編集者の学校 ノンフィクション養成講座 第8回」
講師:中瀬ゆかりさん(「新潮45」編集長)+鈴木洋嗣さん(「週刊文春」編集長)

日時: 11月16日(木曜日) 午後7時〜9時まで
場所:ジュンク堂池袋本店、4階喫茶室

●この講座はノンフィクション冬の時代をどうやって活性化していくのかを、月に一回、ノンフィクション・ライターや編集者の人たちと考えていこうという「講座」です

今後の講師陣
12月21日 柳田邦男さん(ノンフィクション作家)
2007年1月18日 江川紹子さん(ジャーナリスト)


主に前半はノンフィクションライターであることとは? という話で、後半は言論の自由の話。



新潮45」編集長中瀬さんの話。

記事を書くには、カット&デフォルメが必要。
素材を並べても、データにしかならない。
どう並べるかが、書き手の腕。最後は書き手のセンス。

ちなみに、この本↓の「オバはん編集長」とは中瀬さんのことで、表紙の人物が中瀬さん。

オバはん編集長でもわかる世界のオキテ―福田和也緊急講義 (新潮文庫)

オバはん編集長でもわかる世界のオキテ―福田和也緊急講義 (新潮文庫)



週刊文春」編集長の鈴木さんの話。

編集長になって2年半で、13回訴えられて、1回だけ負けた。
名誉毀損についてだけは異様に詳しいのだが、以前は「〜だろう」という書き方であれば大丈夫だったが、最近はそうではない。
ここ10年ぐらいで個人情報とかいわれるようになったということもあるが、裁判官が変わったことに理由があるのだと思う。


言論の自由というのは、憲法で最初に入っていることだ。なぜあの戦争が起こったのか、当時の人は知ることが出来なかった。
戦前を知る裁判官は、それを肌身で知っていて、言論の自由の大切さをわかっている。


だが、若い裁判官は、目の前にいる可哀相な被害者にシンパシーを感じてしまいがちだ。
表現の自由と人権の配慮はどちらも大事で、結局はそのせめぎあいになる。


「最近面白いノンフィクションは?」という元木さんの問いに、お二人は自社の本を1冊ずつ挙げました。


鈴木さん:
奥野修司 『心にナイフをしのばせて』文藝春秋
「お母さんに話を聞けるようになるまで何年もかかった。そして、妹さんの話でお母さんの話を修正して、形になった」

心にナイフをしのばせて

心にナイフをしのばせて

(以下、引用部はamazonデータベースより抜粋)

 一九六九年春、川崎にある男子高校で、一年生が同級生に殺されるという事件が発生した。被害者はめった刺しにされた上、首を切断されていた。神戸で「酒鬼薔薇」事件が起こる、二十八年前のことだ。本書は、犯人の少年Aのその後と、被害者遺族を襲った悲劇を丹念に追った、渾身のルポルタージュである。


 そこで語られた遺族の生活は、あまりにも辛い。人格障害を疑われるほど錯乱した母。悲しみを胸のうちに押し込み、必死で母を支えようとする父。壊れそうな家庭の中で、両親への反抗やリストカットでバランスをとろうとする妹。だがそもそも、こうした証言を得るのに著者は苦労する。母親は、あまりのショックに、事件後数年の記憶を失っていたのだ。


 Aは普通の職業に就けず、その日暮らしをしているのでは、と被害者の母親は気遣いさえ見せていた。だが現在、Aは弁護士となり、法律事務所を経営するほどの成功を収めている。被害者本人と家族への謝罪は、一度としてない。

中瀬さん:
山本譲司累犯障害者』新潮社

累犯障害者

累犯障害者

「知恵遅れの親子が売春をしている。「楽しいし、自分はバカだけど、売っているときは男性から優しくしてもらえるから好き」と言う。これはやめさせるべきなのか? 人間とは何か? と考えさせられる。」

「これまで生きてきた中で、ここが一番暮らしやすかった……」
逮捕された元国会議員の著者は、刑務所でそうつぶやく障害者の姿に衝撃を受けた。獄中での経験を胸に、「障害者が起こした事件」の現場を訪ね歩く著者は、「ろうあ者だけの暴力団」「親子で売春婦の知的障害者」など、驚くべき現実を次々とあぶり出す。
行政もマスコミも目を瞑る「社会の闇」を描いた衝撃のノンフィクション。


その他、ちょっと古いけど話題に出たのが、佐野眞一『東電OL殺人事件』新潮社。

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

1997年3月8日深夜、渋谷区円山町で、女性が何者かによって絞殺された。被害者渡辺泰子が、昼間は東電のエリートOL、夜は娼婦という2つの顔を持っていたことがわかると、マスコミは取材に奔走した。逮捕されたのは、ネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ。娼婦としての彼女が、最後に性交渉した「客」であった。
本書は、事件の発端から一審判決に至るまでの一部始終を追ったものである。その3年もの間、著者は、事件にかかわりのある土地に足繁く通い、さまざまな証言を集めた。事件現場となった円山町は言うにおよばず、ゴビンダの冤罪を晴らすべく、はるかネパールにまで取材に行った。

他にも、週刊誌取材の裏事情とか、スキャンダルのスクープをものにする話とか、ライターとして生活していくには? など、興味深い話がたくさん聞けました。


この講演会に行ったことをブログで書いている方:
退屈男と本と街 : 携帯で読むには長い。
http://taikutujin.exblog.jp/4696960