おまえの次のセリフは……だ!

DDIのPHSを使い始めたのは大学の頃だから、もうかれこれ7年ぐらいになるんでしょうか。
しかし、私は携帯電話・PHSのテンキーで文字入力するというのがどうにもアホらしくて、メール機能はほとんど使っていませんでした。
が、先日機種変更した京セラの通称「京ポン」ですが、予測変換機能というものがついていて面白い。
要するに、「あ」と入れただけで、「明後日」「ありません」「ありがとう」「明日」「会える」「アーティスト」「R&B」「あいかわらず」「アイスクリーム」なんていう候補が出てくれるのです。勝手に学習もしてくれます(なので他人に見られると、『どこでもいっしょ』のトロみたいに、普段の語彙がバレます)。
ソニー製の携帯電話にはけっこう前から搭載されているというのは知っていたのですが、この機能があるので、ちょっくらPHSでメールでも打ってみようかなとか思ってポチポチやってる今日この頃。


楽なことは楽なんですが、むしろいろいろと興味深い。
第一に、私の書いた文なのに私の文じゃなくなる点。
最初は「ありがとうございました」と打とうとしたのに、「ありがとうございます」と予測変換候補が表示されると、「ま、『ございます』でもいいか」とそっちにしちゃったりする。
他にも定型文というのがあって、入力回数を減らそうとすればそっちも使います。予測変換と定型文に支配されつつ文章を書くわけです。
同じような意味なら、予測変換君のオススメや、定型文に乗っちゃうわけです。最初はあくまで自分の文体で書いていけば、学習されて自分の文体で書けるようになるかもしれません。
しかしながら、基本的に文章というのは同じ語尾や同じ語句の反復を嫌って、意図的にパターンを変えるものであるので、さっき使った語彙がすぐ出るのがいいとは限らないのです。


第二に、できるだけ少ない入力数で文章を完成させるというゲームになるという点。
詰め将棋とか、RPGの戦闘みたいに、「最善手で文章を完成させよ!」みたいなゲームになるわけです。いわゆるゲーム性ですよ。
「『渋谷』はさっき打ったから『しぶ』で出るな」と予測変換の予測(!)をしたりするようになるわけです。
予測変換を予測して、なるべくキーを押す回数を少なく、効率よく文章を打つための戦略を考えるようになる。
むしろ携帯電話のキーを押すのが嫌いな私だからこそ、戦略性があって楽しいのかもしれない。

予測変換は便利でうれしい。でも、ちょっと機械に操られてるっぽくてシャクでもあります。
こういうのがパソコンにまで普及しまくってしまうと、「文章(書物)を書く」という、人間の文化活動の象徴とされてきた行為のあり方が、さらに変わってしまうと思うのです。