異相

今市子百鬼夜行抄』(朝日ソノラマ)を、文庫版で読んでいる。
先日のBSマンガ夜話の再放送で見て(本放送は知らないうちに見逃していたようだ)、読みたいと思ってくれたところに、貸してくださる方が現れ、これ幸いと夢中になって読んでいる。

妖怪マンガである。舞台は現代。祖父譲りの霊感を持つ高校生の少年を狂言回しに、妖怪が原因の事件を描く。
舞台は違うし、主人公は特殊能力者ではないが、『蟲師』(こちらの方が後発だが)と基本的に同じタイプの話である。
絵は過度に少女マンガ的でもないので、男性も違和感なく読めるはずだ。

このマンガ、けっこう怖い。ビジュアルが怖いとか、ショッキングなシーンがあるわけではない。だが、話はしばしば不気味である。
しかし、不快感はない。

美内すずえ(『ガラスの仮面』)の恐怖マンガを読んだことがあるのだが、いたずらに恐怖感を煽るだけで、怖いといえば怖いのだが、ただ怖いだけとか、いたずらに残虐なので私の好みではなかった。
しかし本作は、基本的に作者の視点が温かい。オチは基本的にハッピーエンドである。
多くは人間も妖怪も、悪意によって動くことはほとんどない。
人間の世界と妖怪の世界が、少しルールが違うためにちょっとしたボタンの掛け違えが起り、そこにドラマが生まれるのだ。

作者は元々やおいマンガ(ボーイズラブって言わなきゃダメなのかな?)の人のようなのだが、このマンガではそんな要素は微塵もないので安心して読める。(私が気づかないだけか?)