一見も百聞に如かず

新宿というか初台のICCへ。
「百聞は一見にしかず──21世紀の新しい表現の作法を求めて」という展示・シンポジウムを見に行ってきた。

▼目カメラ・ワークショップ
まずは予約していた「「目カメラ・ワークショップ」ー情報技術を利用した『目』に関する体験学習の場ー」http://www.ntticc.or.jp/Calendar/2004/Seeing_is_Believing/Workshop/workshop_j.htmlを体験。
この日からの展示で、私が参加したのは4回目だったのか。それにしてはICCのみなさんの段取りとか説明はそつがなかった。初日の午前中だとは帰るまでぜんぜん気づかず。前に行ったときはスタッフダメじゃんだったけど、今日は偉いっ。
こういうの、VR関係の本とかで見るたびに実際にやってみたかったので実際に試せたのでよかった。
が、どれも割と予想の範囲内で、あんまし面白くない。脳みそをかき回されるような生まれてはじめての視覚体験を味わえるのかとちょっとだけ期待したので残念。これまで読んだり聞いたりした情報をもとに勝手に想像してた世界に遠く及ばない。
その点このあいだid:AYS:20040210の川村直子インスタレーションはすごかったなあ。カメラもHMDもいらない。電源不要で、どこから見てもOKなんだもんなあ。
魚の目(左右を別々に見る)は、係の人がカメラを適当な角度に向けてるので、もうちょっとそれっぽい角度にしてほしかった。二台のカメラにギアを仕込んで、最初は普通の立体視状態で、グイーンと魚や獣の目の角度になっていくのを視覚的に体験させる方が面白いんじゃないかと思った(後のシンポジウムで八谷さんも「だんだん変わっていったらどう見えるのか」というようなことを茅原さんに聞いていたけど)。
あとやっぱり他人がやっているのを周りから見るのはあんまり面白くない。意図的にしていないのだろうが、HMDをつけている人の視野がどういう感じなのかわかるように外部モニタがほしかった(もちろん立体視などはわからないが)。
個人的には、『バイオハザード』的な視覚体験をやってみたいと思った。少なくとも小学校の教室ぐらい(欲を言えば体育館ぐらい)の広さのところの天井にカメラを固定して、その中にHMDをつけて俯瞰画面を見ながら歩き回る(あるいはスイッチを押すとか物を運ぶとかの課題をこなす)。手前では大きかった自分の体が、奥では小さくなってる。自分ラジコンみたいな。『バイオ』みたいに、ある特定のポイントに移動すると違う固定カメラに切り替わるとかもいいかも。誰かやりませんか。

リスペクトしてる八谷和彦さんの視聴覚交換マシンもやっと体験できた。でもあれは基本的にカップルどうしで体験するためのもので、見知らぬおっさん(ぜんぜん喋らない)とやった独り身の私は正直あんまし面白くなかった。
「攻略」しようとするとヘッドホンの外から聞こえてくる相手の足音とかを聞いたりしてしまって、なんか目隠ししてスイカ割りするのと(やったことないけど)変わんなくなっちゃったりするのだ。やっぱり「わー、見えない。どこいんの?」とか気のおけない相手とワイワイやりたい。
カップルでやるときに一応与えられる課題は、相手とキスすること。相手がまったく見えない不安な状態で始めて、お互いの姿を確認しあって、身体接触してゴール。視聴覚が狂わされるけど、最後は気持ちいい触覚で締めるってのはいいなあ。

▼シンポジウム
さて、シンポジウム。

シンポジウム「見ることは信じること?」
インターネット中継
日時:2004年3月13日(土)午後2時─午後5時 [終了しました.]
場所:ICCギャラリーA
入場料:無料
定員:150名(事前予約制,定員に満たない場合は当日先着順)

出演者 :佐藤隆夫東京大学) ,八谷和彦(アーティスト),下條信輔カリフォルニア工科大学),茅原拓朗(東京大学IML)

下條さんはカリフォルニアからテレビ電話会議形式で参加。上に名前は挙がってないけど、元東大で現NTTの前田太郎さんも講演。
目カメラの説明とかは、さっき体験したことを口頭で長々と説明されて退屈。やっぱり百聞は一見に如かずということで、タイトル通りだが。
とても興味深い話をたくさん聞けた。

▼八谷さんの話はやっぱり面白い
八谷さんはスケッチブックみたいなノートに資料を切り貼りして、それを書画カメラで投影してプレゼン。アナログですか! カッコいい。ページをめくると「それでは映像をどうぞ」とか書いてるの。
エラい学者さんたちを前に、こういうのはつまんないとか、いろいろとハッキリものをおっしゃっててすごかった。
八谷さんの秘話。

視聴覚交換マシンの英名は、Inter Discommunication Machineというのですが、これはICCを揶揄ってたんです。インターコミュニケーションというのに胡散臭さを感じててて。技術はコミュニケーションを変質させることはあるかもしれないけど、促進することはないでしょ。

(メモを元に私が適当に発言風に再現したものなので、実際の表現とは異なります。私の聞き間違いかもしれませんので注意。以下同じ)

八谷さんの卓見。

犬を飼っているんですが、犬のマーキングというのは、縄張りとかいうより、掲示板に書き込みをしている感じなんじゃないかなと。
電柱にログが残っていて、毎日巡回しなきゃ気がすまない。ネットを始めて、犬の気持ちがやっとわかりました。

「電柱にログが残っている」!! その発想に脱帽。いまのところ感銘を受けた指摘、今年ナンバーワンですよ。この一言が聞けただけでも行った価値があったというもの。

「優れた技術は、魔法のように思(見)える」……by誰だっけ

誰だっけ。調べたら、クラークの第三法則というはてなキーワードを発見。

あと、新しい技術を使ったメディアアートはすぐ陳腐化する、というような意味のことをおっしゃっていた。これの前のICCの展覧会にも行ったけどid:AYS:20040225、インタラクティブなアート、つまんなかったしなあ。

▼静岡のふしぎ体験館
下條さんはアーティストのタナカノリユキさんと組んで活動していて、今度オープンする静岡科学館る・く・る(静岡駅徒歩1分!)http://www.rukuru.jp/をプロデュース(?)したようだ。錯視好きとしてはすんごく行きたい。脳内のそのうち絶対行こうリストに追加。
る・く・るについて検索したらこちらがヒット。http://www.t-webcity.com/~dan/diary_main.html(2004年03月03日)

「さっかくスクリーン」。これはミラーボールの回る大きな部屋に入って、正面にある一点を凝視するというもの。それをずっと見ていると、やがて自分の身体が廻転を始め、なんとしばらくすると今まで一緒に見ていた観覧者が、突然消滅する。これはすごい。デビッド・カッパーフィールドのイリュージョンかというほどのショック体験。しかし、気がつくとその人物はさっきと同じ場所にいるのである。

これには期待。

▼ラジコン人間
予告には名前が載ってなかった、NTTの前田太郎さんは元東京大学講師のエンジニア系研究者で、VRで動かすロボットとか作ってた方のようだ。関西系で、プレゼン映像もいちいちオチがついてたり。
人間の動きと同じ動きをするロボットの映像では、操作する人間とロボットを並べていて、「この最初に同期する瞬間がかわいいんですよ」と。たしかに。いきなりロボットに命の火が灯ったように見える。
一番ウケてたのは耳の後ろ(?)に電極をつけて前庭感覚を狂わせ、目隠しして「まっすぐ歩いてください」と指示。研究者が取り出したるは、なんとラジコンのプロポ(送信機)!(ここで笑い) これで操作して人間をラジコン化してしまうというもの。で、最終的に歩いた軌跡をプロットするとNTTのマークを描いてるというオチまでついてる。う〜ん、倫理的是非はともかく、プロポで操作できてしまうぐらい、ちょっとした電気刺激で人間の感覚は狂わされてしまうというのに驚いた。
これかな? 「前庭感覚刺激による歩行方向の誘導」http://www2.vsl.gifu-u.ac.jp/vrsj/ac03/programDetail.php?pid=155&Local_Session=8a2cafdd35c8e574fbb9f44593644fb6


ミュージアムショップで八谷和彦さんのDVDを売ってたので、見たいのと応援する気持ちを込めて購入。
あ、八谷さんはてなダイアリーやってたのか(リスペクトしてるくせに知らなかった私)。
関連:id:hachiya:20040310
本日の遭遇さん:id:hachiya:20040313
本日のニアミスさん:id:coaltar:20040313 id:violin:20040313 id:machizo3000:20040313 id:Mar_L:20040313 id:ness:20040313