ムジュン?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040221-00000070-mai-soci

黄色いハンカチ>「兵士の無事願うことと違う」 山田洋次監督
 山田洋次監督の映画「幸福の黄色いハンカチ」をヒントに、イラクに赴く自衛隊員の安全を願って全国に広がっている「黄色いハンカチ運動」について、山田監督は20日、「映画のハンカチは夫婦愛の証し。戦争に行く兵士の無事を願うこととは本質的に違う」と強い違和感を示した。運動を展開している北海道・旭川商工会議所(高丸修会頭)は「善意の運動なのに」と困惑している。

この監督の回答の論理がよくわからない。納得がいかないので、誰かいい解釈を教えてください。
(なお、ここでは自衛隊は軍隊かどうかとか、イラクへ行くべきか否かといった政治的解釈および信条は問わないものとします。純粋に監督のコメントが筋が通っているかどうかを問題とします)

 ◆毎日新聞山田洋次監督に出した質問と、山田監督が寄せた回答(全文)は次の通り。
 質問
 黄色いハンカチ運動についてどのように思われますか。反発の声がある一方で「あのハンカチがあるからこそ、心の支えになった。映画に救われた」との隊員家族の声もあります。
 回答
 ○自衛隊員を派兵する町で「黄色いハンカチ」が見送りに使われていることは、とても気になります。
 ○映画「幸福の黄色いハンカチ」の原作では、ハンカチでなく黄色いリボンで、戦地に赴く兵士を見送ったり、帰還兵を迎えるために黄色いリボンを振るのはアメリカの古くからの習慣のようです。
 ○日本の自衛隊は、イラクに戦争に行くわけではないから、なぜアメリカの習慣のまねをするのか。その昔、「日の丸」の旗を振って兵隊を見送ったのと同じことになってしまうのではないか。

うん、ここまではいい。

自衛隊は、イラクに戦争に行くわけではない
→戦地に赴く兵士を見送るために黄色いリボンを振る
アメリカの習慣のまねをするのはおかしい

筋が通っている。黄色いハンカチ運動は、アメリカのマネって言いたいのね。
で、戦争に行かない自衛隊が戦争に行ったアメリカのマネをするのは変だと。ここまでは(理屈として)わかる。
が、こう続く。

 ○映画「幸福の黄色いハンカチ」は、愛する事の許しを得るという物語です。いわば夫婦の愛の証として、ハンカチを使ったわけで、戦争に行く兵士が無事帰ってきてほしいということと本質的に違うということです。
 ○黄色いリボンやハンカチを並べると派手なのですが、それがイベントみたいになる中で、イラク派兵が憲法違反ではないかという重要な論点が消えてしまうのが不安です。今はじっくりと議論することが大事だと思います。
 以上、よろしくお願いします。

今度は運動が映画のマネみたいな話になってる。どっちなんだ?
どうやら、映画のハンカチと、アメリカの習慣のリボンの違いの話になっているように読めるので、そう読むと

映画では、夫婦の愛の証として、ハンカチを使った。
戦争に行く兵士が無事帰ってきてほしいというリボンとは違う。

というような主張と思われる。つまり、「だから戦争に行く兵士にハンカチを使うのはおかしい」という意味に読めそうだ。
だとすると、前半の「自衛隊は戦争に行くのではない」と「だから戦争に行く兵士にハンカチを使うのはおかしい」が矛盾してしまう。

前半の主張: アメリカ(戦争に行く)←→自衛隊(戦争に行かない)
後半の主張: 黄色いリボン(戦争に行く)←→黄色いハンカチ(戦争に行かない)

ゆえに、
戦争に行く=アメリカ:黄色いリボン
戦争に行かない=自衛隊:黄色いハンカチ
ということになって、自衛隊が黄色いハンカチで問題なくなると思うんだけど。

しかし、監督の論の導き方は

前半の主張: アメリカ(戦争に行く)←→自衛隊(戦争に行かない)
 →だから戦争に行かない自衛隊が同じことをするのはおかしい
後半の主張: 黄色いリボン(戦争に行く)←→黄色いハンカチ(戦争に行かない)
 →だから戦争に行く自衛隊が同じことをするのはおかしい

となってる。

あるいは、後半の主張を「ハンカチかリボンかという差異は特にない。映画は戦争とは関係ないのに、戦争に行く自衛隊が真似するのがおかしい」という読み方もできそうだ。
だが、ハンカチとリボンを同一だとすると「映画の夫婦は、戦争に行くわけではないのに、なぜアメリカの習慣のまねをしたのか」ということになってしまって、前半の文句のつけ方が自分に返ってきてしまうのである。後半の主張を、前半の主張が否定してしまう。
さらに、自衛隊は戦争に行くのではないと言っていた前半の主張とも矛盾する。
別に戦争に行くわけでもないのに映画では夫婦が黄色いハンカチを使ったのだから、やっぱり別に戦争に行くわけではない自衛隊が黄色いハンカチを使ってもおかしくない、ということになる。

結局、監督は黄色いハンカチ運動はアメリカのマネだと言いたいのか映画のマネだと言いたいのかどっちなんだ?
結局、監督は「自衛隊が戦争に行く」と思ってるのか思ってないのかどっちなんだ?
「寄せた」「全文」ってあるからには、電話取材のまとめじゃないはずだし。
眠い状態で読んだので致命的な誤読をしている可能性もあるな。今日起きてから読み直して何をアホな読み方をしていたのか、私は、と思うかもしれないけど、それはそれで面白いので書き残しておこう。

反応:http://d.hatena.ne.jp/John_Kawanishi/20040221