石橋をたたいて渡る

先日森美術館に行ったせいで、また美術館に行きたくなり、ネットで調べたらちょうど京橋のブリヂストン美術館で夜6時からギャラリートークがあるということで、行くことにする。
東京駅・有楽町・京橋・銀座はだいたい同じエリアだと最近わかってきたので、今回は乗り換えせず私の最寄り駅がある有楽町線銀座一丁目下車。


銀座を横切り、京橋方向に向かうとINAXのでかい看板が見えてきた。ひょっとしてINAXギャラリーもあの場所にあるのだろうか、と思ったら手前に間抜けな顔をした黄色い人形が。誰あろう、ピーポくんである。そこは警察博物館だった。そんなのあったんか。http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no3/welcome/welcome.htm
入場無料のようなので立ち寄ってみる。そんなに広くはなかったので、15分程度しか館内にいなかったが、コンピュータとタッチパネルを利用した展示がけっこうあって、ちゃんと見たら1時間ぐらいは潰せると思う。
交通安全用ドライブシミュレータはけっこう新しくて、ドリームキャスト弱ぐらいのグラフィックだった。でも三画面モニタでも側方が見づらいし、やはり距離感がぜんぜんつかめない。クラッシュしてないはずなのにクラッシュしましたと表示されて(リプレイでもぜんぜんクラッシュしてない。バグ?)唐突にゲームオーバー。
浅間山荘をはじめとして、いろいろな事件で殉職した警官の遺影と遺品が展示されていてけっこう鬼気迫る展示もあった。肩書きが「警部」とか「警視」ばっかり。やはり警察でも殉職は二階級特進のようだ。係員の人に聞いたら、遺族が了承して、どちらかというと壮絶な殉職をした人中心に遺影は飾られている、とのこと。


隣のINAXの建物を見ると、やはりINAXギャラリーhttp://www.inax.co.jp/Culture/gallery/1_tokyo.htmlがあるようなので入ってみる。おお、入場無料だったのか。
「配島庸二 展― 1月のクローンド・ヴィーナス―」http://www.inax.co.jp/Culture/2004_01/2_01haijima.html
これはむしろ作品を売るための個展なのかな? 出入り口のところに作家ご本人ご夫婦らしきお二人がいて、挨拶してくれた。何か話したかったが、私は残念ながらこの手の抽象画はぜんぜんわからないのでスルー。
「漂着物考展 −浜辺のミュージアム−」http://www.inax.co.jp/Culture/2003g/09hyoutyaku.html
は面白かった。アジアのいろんな言語の入った100円ライターとか、パチもんのドラえもん人形とか、「おかあさん誕生日おめでとう」とかマジックで書いてある植木鉢とか、手紙入りボトルとか。いずれも以前は「持ち主」がいたわけで、それを想像するといちいち楽しい。
どちらも5〜15分ぐらいで見られる規模で、ちょっと寄り道するのにはいいところだと思った。下の階の美術関係の書店も楽しそうだったのだが、時間がないのでちらっとだけ見る。
本命のブリヂストン美術館へ──と思ったが、軽く腹ごしらえするために東京駅八重洲口付近の吉野家で牛丼ねぎだくを。浜松に住んでいた頃、八重洲口のサウナを定宿としていたので、この辺は懐かしい。ここの吉牛もそのときたまに食っていた。


というあたりでやっと本命のブリヂストン美術館http://www.bridgestone-museum.gr.jp/に。広さは広すぎず狭すぎず、ちょうどよいぐらいだろうか。美術館自体の壁とかのデザインはこれまで回った美術館の中で一番洗練されてるような気がするけど、企業系のはそうなのかな。でも損保ジャパン東郷青児美術館はデパートの企画展みたいなとこだったしなあ。
ブリヂストン美術館印象派以降の西洋絵画が中心。マネとかモネとか。細っそいジャコメッティが印象的だったかな。
日本人だと、洋画家黒田清輝藤島武二藤田嗣治あたりは美術館めぐりするようになってよく見かけた気がする名前。
図録によるとレンブラントも1枚持ってるらしいのだが、いまは絵画は印象派以降、彫刻が古代と近代以降となってて見れなくて残念。
企画展「水彩の力、素描の力」は個人的には特に可もなく不可もなくという感じ。
ギャラリートークは副館長の宮崎克己氏でバルビゾン派コロー『ヴィル・ダブレー』(1835-40)という風景画、印象派ルノワール『すわるジョルジエット・シャルパンティエ嬢』(1876)という肖像画マティス『縞ジャケット』(1914)という肖像画(いずれも常設展示のはず)の解説。
テーマが自然→人間→絵画に変わった、という話。昔絵画といえば教会を飾る宗教画だったが、フランス革命後は市民(ブルジョワジー)の家の壁を飾る風景画が登場。
『ジョルジエット嬢』はルノワールの最初のパトロンからの最初の注文だったので、背景を暗く・人物を明るくするという肖像画の伝統を取り入れているが、その後のルノワール肖像画ではそうではない。その色彩表現は、黒を必要とせず明暗ではなく色と色の対比で描く。以後、闇は青や紫というかたちで翻訳され、明暗は主題とされなくなっていくのである。……というような話を聞く。私は光と闇が好きなので、レンブラント見たかったな。(まだ言ってる)
フォーヴィズム(野獣派)のマティスの『縞ジャケット』はシマ模様のジャケットを着たマティスの娘マルグリットの肖像。表現の中心は「線の色彩化」。その空間は平面性が強調され、わずかな工夫で空間を示唆している、という。赤と黒の服を着たポンピドーセンター所蔵の肖像と同じモチーフであり、どこかでやる秋のマティス展で並べて展示されるらしい。