メタルギアソリッド2のサブスタンス

先日、仕事で久々に秋葉原へ行ったのだが、『ザ・ドキュメント・オブ・メタルギアソリッド2』を、買ったのだった。買ったこと自体を数日間忘れていたのだが、カバンの中を見て見たら入っていたので思い出して、やってみた。
要はメイキングディスク。
ポリスノーツ』のときにも台本などが読めるディスクは発売されていたのだが、今回はそれに加え企画書まで読めるところがすごい。
不評だった新プレイヤーキャラクター雷電の登用は、やはり新規ユーザーへの配慮と、女性ユーザーの取り込みが狙いだったようだ。


映画的映像を追求するのではない!

物理的世界を追求する!

ハードの性能を物理的なリアリティに向ける!

おお、『Half Life2』とかで言われてることじゃないですか。小島監督は1999年の時点でそのビジョンがあったのだな。

ストーリーの狙い
裏切りとドンデン返しの連続。何が真実で、何が虚構なのかが分からなくなる程の展開。アクションゲームでの表現は非常に難しいが、映画「LAコンフィデンシャル」的な展開、構成を狙う。前作ではあえて、明快なストーリーを意図して提供したが、今回は意図して伏線を張り、お話としての面白さを目指す。
全てのキャラクターが一度は嘘をつく(裏切る)

『LAコンフィデンシャル』は見たことがないので今度見てみよう。

・あらゆる室内の電灯のスイッチをオンオフできる。
・電灯を破壊すると、明かりを消すことができる。
・暗闇ではタバコを装備する事で仄かな明かりを確保できる。
 【暗闇でのアイテム】
 ・タバコ(冒頭でスネークから貰う)
 ・フラッシュライト(ハンドガンに装備)
 ・暗視ゴーグル

って、完成品には実装されていないが、後から出たまあ『MGS2』のパクリゲーといっても過言ではない『スプリンターセル』で実装されていて、『MGS2』との差別化ポイントとなっているところが面白い。

大変なので一部しか読んでいないのだが、台本にセリフの意図も書かれているのでけっこう面白い。たとえばエンディングの会話。

スネーク:
確かに今回、お前が自分から何かを選ぶことはなかったかも知れん
(本作では条件分岐がなかったことの隠喩である)

というのは、まあ別に気づかないというか、気づいたからどうということはない。
その後のシーンの絵コンテを見ると、

ローズ 「今度は本当の私を見てね」
ライデンは全く気づいていないようだが、「本当の私を見てくれなかった」というのは「愛国ローズ」(引用者注:ゲーム中に登場するバーチャルリアリティ的偽者のこと)の台詞。
「このローズ」と「愛国ローズ」は同じ?それとも偶然の一致?あるいは「愛国ローズ」の精神モデルをもとに作られたものだから同じ事を言う?ということは「愛国ローズ」の言ったことは、「このローズ」の本音でもある?
等々と思わせる仕掛け。どれをとるかはユーザ次第。

小島カントク、悪いんだけれども、そもそも「今度は本当の私を見てねという台詞を聞いて、「「本当の私を見てくれなかった」というのは「愛国ローズ」の台詞」なんて思い出すプレイヤーはいないと思うんだけど。この手のパターンが実に多いことがわかる。

それにしても、このエンディングのシーンではニューヨークのど真ん中に得体の知れない巨大な物体が突っ込んで街を目茶目茶にして、しかもフェデラルホールのワシントン像にもたれかかって甲冑を着た前大統領が死んでいる、というシーンなのだが、通行人が明らかにコンバットな格好をしているスネークと雷電をまったく気にしないというおかしなシーンで、私はむしろこれがこのシーンが仮想現実なんだ、というメッセージなのかと思っていたのだが、そういう意図はなかったようだ。
実際の完成版にはなくなっている演出だが、

往来の人々はライデンには目をやるが、ローズにはまるで気づいていないかのように行き過ぎる。
ユーザが普通に見た場合、このローズは実在するように見える。しかし、何回かクリアして注意深く見ると、「ひょっとしてこのローズはライデンにしか見えていないVRの延長なのでは?」という解釈も可能な、さりげない演出で。

と書いてるし。

ただ、9・11多発テロによって削除されたと思われる、終盤のニューヨークのビルが壊されていくシーンについてはその断片は読めるが、絵コンテなどは収録されていないのが残念。ムービーも作っていただろうに。公開される日は来るのだろうか。

その他、メモリをどう振り分けたかとか、どう処理を軽くしたかのようなプログラムテクニックも解説されているので、ゲーム開発者を志している人は参考になるだろう。