アンチテーゼ

CEDEC 2日目。1日目でけっこう満腹感があったので、正直モチベーションはあまり高くなかったのだが。
また、前夜東京の蒸し暑さでなかなか寝られなくて、3時間ぐらいしか寝てない状態なので途中で寝ないかまた心配。

「供給者の論理」に陥ることなかれ〜ユーザー目線のソフト開発〜 平林 久和 株式会社インターラク

平林さんは話が上手い。特にゲーム会社の経営者の年代、つまりオヤジを騙す説得するのがとても上手い。
でも有名っぽい学説の不適切な援用とか、よくよく考えると(考えなくても)いいかげんなこじつけをやってたりと、けっこうインチキだったりする(この辺は、先日書いた野安さんにも通じるとこ)。

で、やや不安だったのだが、中京地区(たぶんマグマート)での調査を踏まえた(いや、これもどの程度ちゃんとやったのかは不明なのだが)、ライトユーザーの声をピックアップする(いや、恣意的になのだが)内容で、話の内容はまっとうだと思った。

井上さんのためのメモ:平林さん曰く、「ゲーム性とは何か? GIMU(義務)である。撃たなくてはいけない、逃げなくてはいけない……」だそうですよ。

PS2を買ったユーザーに店頭でアンケートしたら、「初めて買ったゲーム機は?」という質問に、29%がPS2、24%がPS、18%がSFC、17%がFC、6%がSSだった、というデータを示して、「もうPS2ユーザーの3割が初めてゲーム機を買ったユーザー層になっている、制作側はそれを認識しなければならない」と。

ここだけ激しくツッコミたかったんだけど、「いつからいつまで調査したのか?」ということだ。半年とか1年前ぐらい前のある期間なんだろうと憶測するのだけれど、PS2が出てからもう3年半も経っているのである。つまり、ファミコンの頃からゲームをやっているコアゲーマーはPS2をとっくに持っている可能性があって、その時期にはPS2は買わないはずなのだ。このことに気づいていないのか、詐術なのか。(なお、「年末の時期だから」だったか「年末の時期じゃないから」というようなことは言っていたが、私の指摘とはあまり関係ない)

「ゲームユーザーの声なき声 4つのメッセージ……1.わからない 2.難しい 3.時間がかかる 4.値段が高い」とのこと。昨日の岩谷さんに続いて、やはり難しい(いわゆる難易度というより、複雑なゲームシステムという意味?)ことが問題、との指摘が。

その他、店頭でひろったライトユーザーの声(という)。
ファミコンは買ったら全部ついてきたのに、メモリーカードやコントローラーを別売りというのは不親切」(あ、これは私はあまり意識してなかった)
「30時間とかそんなに長い時間遊びたくない」
「3Dのゲームをすると3D酔いする」(わはは、他のセッションではみんな真剣に3Dについて勉強してるのに)
「ひとりでゲームをやっていても幸せを感じない。手に入るものはない」
「思い入れのあるソフトは新品で買う。ざっと楽しむソフトは中古で買う」
……等々。私も大筋で同意する内容だ。
私も、もしゲームについて考えたり、ゲームを語ることに楽しみを見出していなかったら、年に2本ぐらいしかゲームしなるかも。


次は、どれもたいして興味ないなあと思ったら、東大の藤江さん(任天堂に内定がきまったそうです。おめでとうございます! ただし開発職じゃないそう)と会場で出会って、藤江さんは次のラウンドテーブルが本命とのこと。上記のウェブ時間割では、ラウンドテーブルは載ってなかったので、私はその存在を失念していた。参加することに。

http://cedec.cesa.or.jp/roundtable.html

ゲーム産業と大学との連携の可能性を探る
 ゲーム産業と大学といった教育機関との連携の動きが世界的に進行している。しかし、日本ではつながりは限定的で、本格的な実作業はこれからの面が強い。特定分野での共同研究、共同プロジェクトといったゲーム開発力の底上げや、ゲーム開発者がさらに専門知識を引き上げるための教育、さらには、次世代の人材の育成。それらの仕組みを作る上で、何ができるだろうか。
 このラウンドテーブルでは、実際に研究プロジェクトを開始されている先生の現状を聞きながら、ディスカッションを行う。ゲーム会社にとって何が必要なのかを明らかにしつつ、教育機関に何ができるのかについて議論を深め、実践的な活動を行う事を目的とする。

パネラー : 細井 浩一
 立命館大学政策科学部教授
 ゲームアーカイブプロジェクト代表

  馬場 章
 東京大学大学院情報学環助教
 東京大学ゲーム研究プロジェクト責任者

モデレーター: 新 清士
 IGDA東京チャプターコーディネイター/メディアライター

上記の人以外では、東大の大学院生(プログラミング)と、ゲームスクール系の人2名と、開発者の人2名がだいたい発言したように記憶。
大学からゲーム業界に人材を輩出するにはどうすべきか。ゲームスクールとの差別化は。みたいな話。

ストーリー創作の心術 川邊 一外

あの『ゲームシナリオ作法』(新紀元社)の著者の方ですな。昭和6年生まれ。映画・ドラマのシナリオ作成法教育では有名な方、だと思います。
内容自体は、氏の本や、氏のお弟子さんの映画のシナリオについての本を読んでいたので、聞いたことあるような話が多かった。(『作法』の内容そのままという気もしないでもない)
「人の作品から要素を分解して作っても本物にはならない。新しくない」という旨の発言をされていたのだが、
ゲームのシナリオを作るには(RPGの場合)、「1.環境(世界(観)・社会枠) 2.主人公(超目的) 3.悪玉(超ボス) 4.クライマックス」を用意しろ、とのこと。なんかありがちすぎのような。というか言われなくても用意せざるをえないような。「新しくない」と矛盾してる気が。

で、たまたまこの前の野安さんが話題に出してたのと同じところに言及してましたので(直接は関係ないですが)ついでに書いておきます。
ドラクエ1ではバラモスが」という言い方をしていたので、「1」の話か「3」の話かよくわからないのですが、まあどっちでも通じる話です(なのでやっぱりどっちかわからない)。
ドラクエでは最初に王様が勇者に依頼する。主人公の欠落部分が弱く、パンチが弱い。バラモスにいじめられた民衆が出てくるとかするべきだ」と。
で、いま『ゲームシナリオ作法』を見たら、ドラクエ2ではわずかに改善されてるという旨指摘されているのですが(p.136-)。
ちなみにNESドラクエ2ではムーンブルク壊滅のデモが入っているらしいですね。SFC版はどうだっけ? 最初はやったけど覚えてない。GBC版はやってないのでやっぱりわからない。

なんかゲームのシナリオも書かれたことがあるとか。昭和6年生まれなのにすごい。
とりあえずメールアドレスを聞き出したので、メールを送ってみようと思います。

あと、配布資料がある意味すごかった。カメラとかスキャナがないのが残念。

日本大学ゲームプロデュースのための基礎知識
人工知能の限界からウェアラブルユビキタスゲームの可能性まで〜 塚本 昌彦 大阪大学大学院

http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20030819/tukamoto.htm
http://pcweb.pc.mycom.co.jp/news/2003/09/08/07.html
常にHMDをつけて日常生活を送っている塚本氏。去年のゲーム学会で見かけたのだけど、当時は氏のことは知らず、赤尾先生と「あの変な人は何なんだ?」と話した覚えが。
お顔の印象から、太い声を想像したのだけれども、ナレーターのようなソフトなしゃべりっぷりで意外。
基本的にウェアラブルコンピューティングの伝道師なので、氏の未来予測は「布教」の一種であり、その意味で眉唾である(もちろん自覚の上でやっているのだろう。真の意味での確信犯だ)。でも話としては面白かった。詳しく書きたいが長くなってるのでまた今度。
人工知能に幻想を抱くな、というような話も。この辺の話もまた今度。
「30時間の大作RPGは廃れていくだろう」と断言。ただし「ネットワークゲームはちょっとやったり、やめたりできるのでやや違う要素があるが」とも。
複雑なゲームはダメ、時間がかかりすぎるゲームはダメ、という主張は2日間で何度か聞いたな。

というわけで2日間を終えた。2日目も満足満足。ぜんぜん眠くならなかった。いろいろ刺激を受けることができて、やっぱり行ってよかったと思う。

帰りにお茶の水丸善(があったのか。偶然発見)に寄る。