なぞる

野安さん、もう最高。
http://plaza18.mbn.or.jp/~noyasu/game/Dq8/00.htm
[3]ルネサンスの到来

たとえば。
主人公は、伝説の勇者の血を引くものではない。

王家の血筋のものではないのだ。
『1』や『2』とは違うのだ。
主人公は、ただの庶民なのだ。

だから物語は、王宮の中からではなく、民家から始まる。
『1』や『2』とは違うのだ。

王様からは、命令も依頼もされない。
手元にゲームがあるなら確認してほしい。
アリアハンの王は、謁見にきた主人公に対し
「旅に出たいという願いを聞きとげ」ているに過ぎない。

王様の命令によって物語が動き始めていた
『1』や『2』と比較すると、その違いは明白だ。

細かな部分が、少しずつ変わっていることがわかる。
もちろん、意図的に、変えられているのだ。

ものすごく的外れなこと書いてるような気がするのは私だけでしょうか。

さて、ドラクエ3の勇者の素性がドラクエ1・2の勇者と何が違うのかというと、基本的に生まれとしては何も違わない。
ドラクエ1の勇者は、ロトの血を引く者。2は、ロトの血を引く者の血を引く王子。3は、勇者オルテガの息子。
いわゆる貴種流離譚であることは変わりない。
では、ドラクエ3の勇者の状況が1・2の勇者と何が違うかというと、父オルテガの存在である。

ドラクエ3は、オルテガの跡を追うという形式で話が進行する。そして終盤、オルテガの死を目撃し、父の成し得なかった仕事を息子が成し遂げて完結する。
父を追い、父を超えるという、ありがちな成長物語である。

さて、この跡(後)を追うという形式はゲームにおいてきわめて有効である。

というよりむしろ、ほとんどのゲーム(特に物語があるもの)は「なぞる」ものだからだ。

(……という話は、そのうちGAMIANで書こうと思っていた根本的な話のひとつなのだが、勢いでここに書いてしまおう。そのうち改めて掲載することとする。)

小説や映画など、線的な物語は、なぞることによって鑑賞する。物語をなぞる。文章をなぞる。フィルムをなぞる。ビデオテープをなぞる。DVDの記録面をなぞる。
ゲームの場合、ランダムアクセス性はあるのだが、やはり基本的にはなぞる。制作者の作ったものをなぞる。
スーパーマリオは右に進むだけのゲーム」というのは、言い換えれば、制作者が敷いていったコースを右にどんどんなぞっていくということだ。
レースゲームだって、コースをなぞる。RPGや『メタルギアソリッド』みたいなゲームは、ラスボスまでの道をなぞる。『バイオハザード』『クロックタワー』『セプテントリオン』みたいな脱出モノも、出口までの道をなぞる。
いずれも、「→」という矢印で表現できるものであるって、たいした差はない。

スーパーマリオのような一本道ならよいが、『ドラクエ3』のような、いろいろなところへ行くことができるゲームでは、プレイヤーの誘導がしにくい。『ロマンシングサガ』のように、誘導しない、という荒業もあるが、ふつうは誘導する。
で、一番楽な方法は何かというと、誰かの後を追わせることである。オルテガの通った道をなぞっていくのだ。わかりやすく、説得力がある。
目の前にニンジンをぶらさげられた馬のようなものだが。

これは、『ドラクエ2』の最初のクエストである、サマルトリアの王子追跡イベントにその原型がある。オルテガは、サマルトリアの王子をクエスト(イベント)単位ではなくて、ゲーム単位で規模を拡大したものといえる。

さて、激しくどうでもいい話なのだが、ネタとしては笑えるのでせっかくだから俺は残りも見るぜ。

でも、ゲームが進むにつれて、
人々の価値観が変化していく。
王の態度も、変化していく。

ロマリアの王も、ポルトガの王も、
ただの人間に過ぎないことが、執拗に描かれる。

もはや、王には絶対的な権威がない。
犯すべからざる存在ではない。
そんなエピソードが、次々に登場する。

村の人々は、王の陰口とか悪口を
ごく普通に口にするようになる。
盗人にいたっては、王の象徴である王冠を盗む始末だ。

王の権威が落ちていること、
王がただの人間に過ぎないことが、
あらゆるイベントで、しつこいほど繰り返される。
のである。

それはドラクエ3で世界が広がり、単に王様がたくさん出てくるようになったからでは。
あと、ドラクエ2のラダトーム王は王の職務を放棄したダメ王として出てきますが。

1:
アリアハンから脱出するときに使ったアイテムを
おぼえているだろうか?

「魔法の玉」だ。
これで、いざないの洞窟の壁を爆破したはずだ。

なお、『1』や『2』には、
何かを爆発させるアイテムは登場しない。


2:
ポルトガから船に乗れるようになる。
つまり、大航海時代が始まっている。


3:
セーブの方法が変化した。
復活の呪文ではなく、冒険の書になった。

書物に書き込めるようになった。
それを複製することもできた。


これは、何を意味するのか?
簡単だ。つまり、

1:火薬
2:羅針盤
3:活版印刷

なのである。

これらが、ルネサンスの3台発明であることは
説明する必要もないだろう。

ルネサンスを想起させるアイテム・出来事は、
すべて『ドラゴンクエスト3』から登場するのだ。
『1』や『2』には、登場しない。

ぼうけんのしょ」が活版印刷!! すごい! 楽しすぎ。

じゃあ、私は「ドラクエ2には「せいなるおりき」というアイテムが出てきたが、あれはカートライトの力織機であって、ドラクエ2は産業革命の物語である」とか主張しちゃおうかな。

たしかにドラクエ3には大航海時代ネタが多いんだけど、それは単にマップがでかくて船の重要性が増して、しかも世界地図を用いたからにすぎないでしょ。
マップのXY軸座標上のどこにいるかを教えてくれる羅針盤に相当するアイテムは、1に登場する「おうじょのあい」からあるし。

うーん、けっきょく次回に出てくるドラクエ4が勧善懲悪じゃないって話を、教会の絶対的な価値観からの脱却とか言ってやりたいのかな。
次回も笑える内容希望。