流行通信

9月8日付け http://d.hatena.ne.jp/AYS/20030908 のコメント欄より。

# h_tanaka 『エロゲーは幾つかの名作によって、比較的明確に時代が分けられますよね。「同級生」が登場したことによる「蛭田の時代」(1992〜)、「DESIRE」登場による「剣乃(菅野)の時代」(1994〜)、「ToHeart」に代表される「Leafの時代」(1996前後)。Leafぐらいから、時代が欲するものと自分が欲するものの間に溝が出来始めて、主流からは逸れて行ってしまいました。それがかえってコンシューマへと自分を呼び戻すきっかけになったような…。しっかし、これらのゲームは全部コンシューマにも移植されてるんですね。なんかさびしい。』

# ityou 『それ以外のコンピューターゲームに比したとき、エロゲに「時代」があるのはなぜだろう? 技術力に依存する度合いが低くて、各社ごとの真似できない囲い込まれた技術があまり存在しないからかな。ソフトのなかでもソフト性が高い。絵描きとシナリオ書きの体力がそのままゲームの分量になる。』

# h_tanaka 『>ityouさま 体力=ゲームの分量はそのとおりですね。基本的には、各社が作ったシナリオシステム上で、シナリオスクリプトをポチポチ書いているだけだと思いますので。「時代」の存在理由は、あまり考えたことが無かったですが、エロゲー業界は”スピード”が命で、おっしゃるとおり技術力に依存する度合いが低いからなんでしょうね。真面目に一からゲームシステム考える時間が無いので、一番手近にヒットした作品を真似るという、「手堅い」作りが多くなるんでしょう。』

# uel 『細かく見ると、「kanonに代表される泣きゲーの時代」(2000〜)というのもあったり。ゲームシステム的には「leafの時代」と何も変わっていないんですが。』

# uel 『そもそもプログラマが居ないエロゲ会社も結構あるようです。』

# h_tanaka 『> uelさま 細かく見なくてもおっしゃるとおりですよ。ToHeart以降はトレンドを知らないので単に書けなかったんです。すみません。ところで、ポスト「泣きゲー」って、どんな姿になるんでしょうね???』

# uel 『「Toheart以降」というと、やっぱり「月姫」なのかなあ。ヒット数の割にはエロゲー界への影響は薄いような気もしますが。』

# AYS 『エロゲに時代があった、というとどういうことなんでしょう? スト2、バーチャと、格闘ゲームに時代があった、というのとは違うのでしょうか?』

# AYS 『「同級生」「2」、「DESIRE」「EVE」「YU-NO」まではテキストもさることながらシステムが評価されたわけですよね。一方、「To Heart」「カノン」などいわゆる葉鍵系(だっけ?)と「月姫」は、純粋にシナリオ内容のみが評価されているわけですね。』

# AYS 『ほかにも、いっぱい売れたエロゲーはあるわけですよね? 「大悪司」とかすごい売れたってわけじゃないのかな』

# uel 『その時代には似たようなゲームが一杯出たぞ、という認識で概ね間違いないと思います。俺は格ゲーにはあまり詳しくないのでそちらへの言及は出来ないのですが』

# uelYU-NOやDESIREといったコマンド総当りゲームはどうしても敷居が高くなってしまうという問題点があったようで……。葉鍵系のヒットは選択肢クリック型というシステムが評価されたという面もあるのではないでしょうか。』

# uel 『非選択肢クリックゲームでも大悪司バルドフォースうたわれるもの等はかなり売れたはずですが、せいぜい年に2.3本しか出ない突然変異のような物という印象が。(実際にはPC98とかその時代の生き残りみたいですが)』

# uel 『選択肢クリックゲームはかまいたちの夜形式といった方が正しいかな。ファウストでもそのあたりが少し出てきましたね』

# mihael2 『システムとして優れていても、他社が真似できないとムーブメントにはならないって事ですかねー。雫や痕はロジックとしてはそれほど複雑な物じゃなかった』

# h_tanaka 『「同級生」は確実に「ときめきメモリアル」を誘発しましたし、当時のゲームの平均容量(FD5〜6枚)の倍ぐらいの分量であっても、ちゃんと売れるし評価もされるという点が、アリスソフトなど他のエロゲーメーカーにも大きな影響を与えたと思っています。大きなくくりでいえば「大作系の時代(1992〜1996)」と言えると思います。最後のピークは「YU-NO」と「鬼畜王ランス」でしょうか。これに疲弊した各社が、別の方向に流れて言ったのが1996年以降。作るのもプレイするのも比較的お手軽な(でも感動したり泣いたり出来る)方向へと傾いていったように感じます。』

# h_tanaka 『> AYSさま 売れたということですと、エルフの「臭作」が数字の残っている中では一番売れたという記事を読んだことがあります。確かに私も買いました。でも、「遺作」ほど面白くなかったです(地味ですけど「遺作」は名作です)。今年の最多販売数は、おそらく「妻みぐい2」。安価なのが効いているのと、実際評価も高かったので、おそらく揺るぎないものだと思います。超強力な対抗馬である「Lovers」は、普通のソフトの価格ですし、そもそも今年出るかどうかが極めて怪しいです。』

# AYS 『「年に2.3本しか出ない突然変異のような物」というと、エロゲー界の『FF』みたいなもんなんでしょうか』

# AYS 『臭作・遺作ってのは、陵辱系というやつですよね。そういうのが売れているのかー。私はそっち系は嫌いなのですが、嫌いな人は少ないのか』

# AYS 『「妻みぐい2」はどの辺が評価が高かったのでしょうか? 絵? シナリオ? システムってことはないか』

# uel 『妻みぐい2は定価2800円というコストパフォーマンスが強烈でしたね。アリスでないと出来ないという面でも、『エロゲー界のFF』という表現はいいところを付いてると思います。』

# h_tanaka 『遺作は面白い性格を持った作品で「陵辱鬼から少女たちを守る」ゲームなんです。エロゲーを買ったのに、本編(最高のエンディングへのルート)ではエロシーンが無い。この二律背反的な行為をユーザーに一生懸命させるほど、アドベンチャーゲームとしての質が高かった。臭作は女の子を陥れるゲームなので、そこが決定的に違います(遺作の続編ということで、深く考えずに買って後悔しました)。また、「妻みぐい2」は純粋にコストパフォーマンスが高いからです。安いと言うことがいかに偉大であるか。去年も「妻みぐい1」が相当上位にランクインしていました。』

なるほど。大ヒットしてフォロワーがいっぱい出てくると時代を作ったエロゲーとなりえるわけか。

ちょうど、よく拝見させていただいているDAKINIさんのところで、例の『ファウスト』関連の話(関連: http://d.hatena.ne.jp/hazuma/20030906 )からエロゲー史観の話がなされていたので引用させていただく。

http://www3.azaq.net/bbs/300/dakini/

Re: 安全圏 DAKINI - 2003/09/12(Fri) 12:18:56 No.2436

ですね。
愉快な方ですよね。

ライトノベル」とギャルゲーマーエロゲーマーのオーバーラップは
確かに考察に値します。ただビジュアルノベル系にやや絞りすぎている
点が残念ですね。「文章を読む」という直接的な部分に拘泥しすぎて
いるのは、結局本人があまりゲームを知らないからでしょうね。

個人的には「ギャルゲー」というと、『サクラ大戦』が100万本売れ
たり、『EVE the burst error』が30万本売れたり、といった当時の
過剰な売れ方が頭にあります(無論、その前の『ときメモ』や『卒業』の
時代も)。

その後、ビジュアルノベルの時代が始まっていくわけですけど、いきなり
ビジュアルノベルから始められてしまうと――『YU-NO』は参照している
ようですが――、どうも違和感があります。実はその過程で、ユーザーの
裾野は小さくなっているわけで。数万本で売れたとか言って、それで
代表例化しちゃうのは明らかに破綻していますし。ま、ラノベの市場とて
それ程大きなものではないですし、市場が割と細切れになっている状況で
各個の話をしようとすれば、そうならざるを得ないのかもしれませんが。

ギャルゲーの流れについては、二次元ドリームマガジンの最新号vol.12
がうまくまとめています(ときメモ直系にしぼってますが)。
ときメモ→トゥールー・ラヴストーリー→センチメンタルグラフティ
北へ。ICOゆめりあ という流れで、ときメモ直系と見せつつ、
ICOが挿入されているあたりが面白かったです。

ま、東浩紀氏は明らかに「ゲーオタ」を分析も評論もできていませんし、
他にできている人も聞かないので、そういう意味ではゲームはまだまだ
オタク研究の対象になり得てない。いや、できる人がいないということ
なんでしょうね。

彼のいうところの狭い世界にしても、結構以前から枯葉といわれている
状況だったり、鍵の破綻もそうですし、その後の鬱ゲーブームを経てから
の今日の混沌とした状況について無言及という時点で、つまらないな、と
思ってしまいます。

つっても、ファウストの作家の中で、美少女ゲームをやっている人って
どれだけよ?ってのもあるわけで。滝本竜彦葉鍵系は手を出している
ようですけど、その先はわからないし、佐藤友哉は全然わからなかった
と言ってますし、西尾維新は――わかりませんね。どっちもありそう。

つまりファウストの側は基本的に「わかってない」側なんですよね。
ただ、明らかに新本格系とラノベ、それにギャルゲー、エロゲーの層は
重なっている。そういう市場の現象ははっきりしている。だから雑誌を
創刊できたともいえる。その市場的下地ができたといえる。ただ現象と
しては知覚できているんだけれども、それ以上のことはわからない。
わかってない。その「痛さ」と滑稽さが面白い雑誌ですね。

買っている人の大半は、舞城王太郎西尾維新、TYPEMOONしか
読んでなさそうな気がしますけど。

二次元ドリームマガジン』チェックしてみなければ。『ICO』をギャルゲー文脈で語るっていうのは稀に見るが、ギャルゲー史の流れに位置づけるってのは(読んでないので)解せん。ポリゴンの『ゆめりあ』へ繋げるための布石なのか?

8月1日付け http://d.hatena.ne.jp/AYS/20030801 でも引用したが、「次の年には前の年に注目を引いたゲームと同じようなゲームばかり出てくる」というような趣旨の宮本茂氏の発言を引くまでもなく、大ヒットゲームはしばしば時代を作るが、むしろ似たようなゲームばかりになってユーザーが飽きてしまうというのもある。
2D格ゲーの衰退もおそらくそう。(それでもネオジオは持った方だといえるのだろうか)
音ゲーの衰退。コナミが『ビートマニア』系を裁判してまで独占したのがよかったのかどうか、誰かが検証してほしいところ。

次の葉微妙に違う話なのだが、「次の年では」ってところから思い出した発言。ゲーム業界はまだまだ技術革新が停滞しない。「制作」のみならず「開発」と呼ばれるのもうなずける世界。

http://ascii24.com/news/i/topi/article/2003/07/30/645223-001.html?

Splinter Cell』は確かに先進的なグラフィックスが満載の3Dゲームだが、リペイジ氏に言わせると妥協点もかなりあるのだという。しかし、この妥協こそが『Splinter Cell』の成功に結びついたと彼は自己分析する。

「ゲームビジネスを成功させる上で重要なのは、その年の一番を狙わないことだ。なぜか。どうせ次の年はそれで勝てないのが分かり切っているから」(リペイジ氏)

彼が言いたいのは、「最新テクノロジーインプリメントすることに夢中になっていると、ゲームの売り時を逸してしまう……だから、適当なところでやめて発売しろ」ということだ。なんだか、これも年内発売が絶望的な『Doom III』に対するメッセージのようでおもしろい。

中小の技術力があまり高くない開発会社(上記の『スプリンターセル』の会社のことではない)が、そのとき最先端のソフトを目標にして開発すると、完成する1〜2年後とかにはとっくに時代遅れになっていて、しかも2年前にお手本にしたソフトにもぜんぜん及んでないようなのができてしまうというのがよくある気がする。
身の程を知れということか。高い技術がなくても創れるゲームはいっぱいある。
社長とか営業サイドからの命令でしょうがなく作ってるのかもしれないけど。