サントリー学芸賞・イズ・デッド! 竹内一郎『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』が受賞〜その2
竹熊健太郎さんも紹介していますが、究極の戦後マンガ史図鑑『現代漫画博物館』が出たそうです。
- 作者: 小学館漫画賞事務局,竹内オサム
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/11/07
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 11回
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http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_9788.html
監修は、竹内オサム氏、先日急逝された米澤嘉博氏、ヤマダトモコ氏だそうです。
出るなら出るって言っておいてくれれば……。どうやって年末の予算に計上しよう。
さて、9日付け(id:AYS:20061109)で書いた、
第28回サントリー学芸賞に、竹内一郎氏の『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』が、伊藤剛氏の『テヅカ・イズ・デッド』をおさえて選ばれてしまった、という話の続きです。
- 作者: 竹内一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/02/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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以下の内容は、当初9日付け(id:AYS:20061109)分の追記として書かれました。
この問題については、やはり注目度は高いようで、9日のエントリには現在27のはてなブックマークをいただいております。(ありがとうございます)
ただ、よく考えたら「1度見た人は2度同じエントリを見ない」ということに気づいたので、今回、追加分を新エントリとして独立させました。
ところで、ググったら、『人は見た目が9割』に関するインタビューを発掘。
インタビュー・この人がすごい! 『人は見た目が9割』大ヒットは偶然ではない!? 竹内一郎氏
http://www.timebooktown.jp/Service/clubs/00000000/interview_06_01.asp
竹内氏は、こういう見た目の人なんですね。
さて、今回の授賞に関して。
漫画評論家の永山薫氏も反応されました。(以下、抜粋)
9月11日に生まれて [事件]なんてぇこった!
http://d.hatena.ne.jp/pecorin911/20061110/1163162678
上記は三浦さんの講評からの引用ですが、これを読んでまず
「これでは漫画批評の草分け的存在である先輩方も浮かばれまい」
と思いました。
石子順造さんも呉智英さんも村上知彦さんも高取英さんも、三浦さんにかかっては
「自由民権の闘士が浮世絵を論じているようなもの」
と一刀両断ですからね。
いやはや、無礼者のオレですら、先人には一定の敬意は払いますよ。もちろん批判すべきは批判し、評価すべきは評価します。少なくとも、こんなありえなさそうな「たとえ」を用いて茶化すようなマネはしません。なにしろ三浦さんは、最近の漫画批評の収穫については最初から「眼中にない」ようなのですから。
うわあ、大塚英志も伊藤剛もいないことになっている。大塚さんはサントリー学芸賞を受賞してんのに無視ですか。ここまで来ると、なんかこう色んな意味で背筋が寒くなってきたよ。大丈夫ですか、ホントに?
- 作者: 永山薫
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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石ノ森章太郎氏・赤塚不二夫氏などとも親交が深かった、トキワ荘のマンガ家たちをよく知るマンガ家長谷邦夫氏(大垣女子短期大学ほか講師)も、竹内本刊行時に以下のようにコメント。
長谷邦夫の日記 - 専門学校の今期最終授業
http://d.hatena.ne.jp/nagatani/20060214
購入。帰宅すると『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』(竹内一郎・講談社)がアマゾンから到着していた。
少し読んでみましたが、とても帯コピーにある「本格漫画評論」とは言いがたい雑論」のようです。
すべて、今までどこかで読んだデータ的・回顧的な<話題>のツギハギで語られています。そのくせに新しいマンガ表現論が語ってきた考え方に目が届いていません。
手塚治虫は楽天・一平ら以降のあらゆる有力マンガ家に、幼年時代から影響を受け
ストーリーマンガの創始者になった!〜という、実に珍妙な説明に終始しているように見えます。もっと読み進めれば、少しは整理されるかも知れませんが…、日本のマンガ「研究」の進化を無視したかたちに近い論法が目立ちます。
まあ床屋政談と思えば、それでいいのかも知れませんが、ちょっと雑過ぎます。
予想通り損した。(笑)講談社選書メチエのレベルまでが心配。やはり編集者がダメ、ってことなんですよ。
作者はマンガ原作者もやってるから、良くマンガを知ってるだろう〜くらいの認識でお願いしたんだろうなぁ。
『ゲームセンターあらし』で一時代を築いた、マンガ家・小説家のすがやみつる(菅谷充)氏も、刊行時に書かれていました。
すがやみつるHomepage Diary (06/02c)
http://www.m-sugaya.com/nikki/nik0602c.htm
『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』(竹内一郎/講談社選書メチエ/2006年2月刊/1,680円)
映画の技法に手塚マンガの技法を当てはめているけれど、手塚先生は、どこまで自覚的に映画をイメージしていたのだろう。この本で解説されている映画の技法との関連は、なんだかこじつけくさい。後出しジャンケンのように見えてしまうのは、(引用者注:すがや氏が)やはりコリコリとペンで斜線を引き、スクリーントーンを貼ってマンガを描いていた経験があるからかもしれない。『人は見た目が9割』(竹内一郎/新潮新書/2005年10月刊/714円)........こちらの本でも、マンガについて触れられているが、どうもピンと来なかった。この本、ベストセラーになったのは、タイトルの勝利だと思う。
↑上の2氏の日記、今年の2月に書かれた文章ですよ。
どうやら、サントリー学芸賞であんな選評を書いてしまった三浦雅士氏は、とりあえず「手塚治虫=ストーリーマンガの起源」でググってみるというアイデアが思い浮かばなかったようですね。それが悲劇の始まりでした。
前回のエントリで、刊行当時のコメントを引用させていただいた、白拍子なんとなく夜話さんが、改めてナイスなツッコミをなさっています。
白拍子なんとなく夜話 - 探そう! 「手塚治虫=ストーリーマンガの起源」突っこみ十選
http://d.hatena.ne.jp/y-shirabyoushi/20061111
「手塚治虫=ストーリーマンガの起源」突っ込みいろいろ(みんなも図書館でこの本を借りて探してみよう!)
・「結局、筆で描いているうちは、純粋美術の挫折者が漫画で食べているという構図なのである。」一平や楽天の遺族・関係者はこいつ殴っていいぞ。あと安彦良和御大もこいつ殴れ。・「『映画監督術』が日本で発売されたのは、一九九六年のことである。それまでは、同書ほど懇切な映画技法の入門書は、日本になかった。」映画関係者の方々もこいつ絞めてくれ。
・「二〇代、三〇代で評価を得た小説家が、四〇代でこれほどまで作風を変えられるだろうか。私は手塚を、とてつもなく巨きな人だったのだな、と思う。」個人的な感想が評論って、ちょwwwwwおまwwwww
・「だが、劇作家の多くは物語が作れない。端的にいって右脳タイプなのである。」劇作家も怒れ。
・「ところが手塚は、左脳タイプの作家である。」もう血液型占いでもしてろよ。
さすがに右脳タイプ、左脳タイプとか言っちゃうのはなあ。疑似科学じゃん。
上で指摘されている、「ほとんど全ページにツッコミどころがある」「単なる著者の主観によって論じられている」という特徴は、あの「ゲーム脳脳」という言葉を生み出したトンデモ本、名著『ゲーム脳の恐怖』と似てますね。
- 作者: 森昭雄
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2002/07/10
- メディア: 新書
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前回、夏目房之介氏のブログでのコメントを紹介しましたが、他にも「BSマンガ夜話」とかを見ている人なら普通に名前を知っている、ビッグネームの方々が、今回の授賞に呆れています。(しかし主にmixi内で発言されているので、紹介できないのが残念)
その他のネット上での反応:
ad-lib-comic-log: 忘れられた80年代少女まんがの展望へ向けて
http://comiclab.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/80_08b3.html