『ゼルダの伝説トワイライトプリンセス』は、世界が反転しているッ!!

任天堂の新型ゲーム機Wiiの最大のキラーソフトといわれているのは、『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』です。
http://www.nintendo.co.jp/wii/rzdj/index.html?link=text

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス - Wii

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス - Wii


でも、実はこのソフト、一世代前の(つまり現行の)ハードであるゲームキューブ(GC)用に開発されていたのを、


「あのWiiのリモコンで遊べたら楽しいんじゃないですかね?」
「そうですね。どうせWiiにも目玉ソフトがないし、Wiiのローンチに使いましょう」


……と、任天堂の人が考えたのかどうかは知りませんが、とにかくWii用ソフトとして発売されます。(なので、映像などはGCクオリティに準じるものになるらしい)


で、普通だったらGC版は開発中止・発売中止になるのですが、そこはゲーム業界の良心、天下の任天堂です。

Wiiを買えないお子様のために、ちゃんとゲームキューブ版もリリースされます。
(通販専用だけど)
http://shop.nintendo.co.jp/GoodsList.do?CATEGORY_ID=zelda

で、この違いがウェブサイトで発表されているのですが。


Wii版とGC版の違いについてhttp://www.nintendo.co.jp/ngc/gz2j/index.html

画面表示について
Wii版とゲームキューブ版では建物や仕掛けなどの構造物やマップ、キャラクターなどが左右反転した状態で描かれます。例えば、Wii版では主人公であるリンクが右手で剣を持つのに対して、ゲームキューブ版では左手で剣を構えます。


な、なんだってーーーー!!


つまり、Wii版に慣れた人がGC版をやると、世界が左右反転している、ということです。


SFなどで、鏡の中の世界に入ると、すべてが反転していたりしますが、あれですよ、あれ。
GC版をやった人がWii版を、Wii版をやった人がGC版をやると、大混乱は必至。


鏡文字で日記を書いてたダ・ヴィンチぐらいじゃないの? できるのは。
ダ・ヴィンチといえば、『ダ・ヴィンチ・コードダ・ヴィンチ・コード デラックス・コレクターズ・エディション ミニクリプテックス付き [DVD] ダ・ヴィンチ・コード コンプリート・ボックス (完全初回限定生産) [DVD]
ですよ。この映画については、けっこう語りたかったのですが、DVD出てしまいました。今度書きます)

左右反転。
なんでこうなったのか。


私の想像ですが、主人公のリンクが左利きだったことに由来するのではないでしょうか。


ファミコンディスクシステムで出た、初代『ゼルダの伝説』から、リンクは左利きでした。
ファミコンミニ ゼルダの伝説1 ファミコンミニ リンクの冒険 ゼルダの伝説 神々のトライフォース&4つの剣
↑ほらね。

なぜ左利きなのかというのは、諸説がありますが、作者の宮本茂さんが左利きだからというのが最も有力視されている説です。

(というか、当時のファミマガか何かのインタビューでミヤホンさん(当時の宮本さんの媒体に出るときのニックネーム)がそう言ってた気がします)


で、Wiiは、例のヌンチャクコントローラーでコントロールする。
多くのプレイヤーは、当然のことながら右利きです。
「プレイヤーが右利きで、右手でヌンチャクを振り回すのに、画面のリンクが左利きで、剣を左手で振り回す」だと、いろいろと不都合が出る。

で、


「画面のリンクも、右利きにした方がいいんじゃないですかね?」
「いや、リンクといえば左利きだ! 20年前からそうなってる! これは絶対譲れない!」
「いや、お客さんの遊びやすさが一番大事だ!」


……などと、任天堂社内でプロジェクトX」さながらの熱い議論が行われ、結局右利きになった、と私は想像します。


しかし、リンクだけ直せばいいわけではありません。
リンクが左利きから右利きになったことによって、すべてが変わるのです。
なぜなら、ゲームの世界というのは、プレイヤーキャラクター(主人公キャラクター)のためにすべてが設計されている世界だからです。

考えてもみてください。
世の中のものは、ほとんどすべて右利き用にデザインされています。
改札のきっぷ挿入口、自販機のコイン挿入口、ハサミ……等々。
それを、「今日から、世の中の人がみんな左利きになるので、作り直してください」という話になったとして、そう簡単に直せるわけないでしょう。
「左利き」は天才?―利き手をめぐる脳と進化の謎 おいしい左きき 左ききでいこう!―愛すべき21世紀の個性のために

直すには、膨大な作業量が必要。
しかし、デジタルの世界で使える、魔法があったのでした。
デジタルでは、左右反転は、簡単です。

「別にいちいち調整し直さなくても、世界全体を左右反転すればいいじゃないか。」
この、なんという、コロンブスのタマゴ的な発想。
このとんでもない発想法。さすが任天堂。恐るべし。

現実の世界を舞台にした『龍が如く龍が如く2 龍が如く Play Station2 the Best
とかだと、こうはいきませんね。


ともあれ、英語の「right hand」は、「正しい手=右手」ということらしいですが、まさに「右手にするのが正しい手」ということになったわけです。



私は、ゼルダの伝説 風のタクトゼルダの伝説 風のタクト
で、リンクは左手に指揮棒を持っているのに、コントローラーでは右手でスティック操作しなければいけない
のに納得しなかったとか、

あるいはICOICO PlayStation 2 the Bestで、主人公のイコという少年がヨルダという女の子と手を繋ぐのは左手なのに、手を繋ぎ続ける操作が「(右手で押す)R1ボタン押しっぱなし」という仕様が許せなくて、コンフィグでL1ボタンに変えたとかいう人間ですので、
今回のこの英断には拍手であります。

つまり、
画面内のプレイヤーキャラクターが右手で行う動作は、プレイヤーも右手で操作しなければならない。
という話です。

それはさておき、(私の脳内の)任天堂社内に戻りましょう。

そして、誰かがつぶやく。


「あれ? じゃ、ゲームキューブ版はどうするんです?」


また喧々諤々(←誤用)の議論が半日続き、


「せっかくだから、リンク本来の姿である、左利きで出そうじゃあないか!」
「そうですね。左右反転していたほうが、お客さんも両方やる楽しみがありますし!!」


……みたいな結論に達したのではないかと、私は妄想します。
まあ、実際は宮本さんの鶴の一声で決まったのかもしれません。


仕様を切る人、デバッグをする人、攻略本を作る人、いろいろ大変じゃないのかなあ。まあ、攻略本では、GC版はないものとして処理するのかもしれませんが。


鏡像世界といえば、ゲームは同じデータを使いまわすことが得意ですから(作る方の手間は省けますから)、鏡像世界ネタはちょくちょく出てきます。
(それよりも、『ドラクエ6』『クロノ・クロス』とか、「そっくりな別の世界」というのが多いですけど)


鏡像世界で思い出すのは、スタートしてすぐ逆走して壁に突進すると、突き抜けて鏡の中の世界に突入して、鏡像コースが走れる『リッジレーサー』(PS版)ですね。


ミラーワールドといえば、ゲームじゃないけど『仮面ライダー龍騎仮面ライダー 龍騎 Vol.1 [DVD] 仮面ライダー龍騎 Vol.12 [DVD] 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL ディレクターズカット版 [DVD] も名作だったなあ。「俺は幸せになりたかっただけなのに……」


あと、せっかくなので、一昨年ポンペイで私が撮った「犬のゆか絵」の写真を、左右反転して貼っておきます。
ジョジョの奇妙な冒険 51 (ジャンプコミックス) ジョジョの奇妙な冒険 16 (ジャンプコミックス)


いずれにせよ、結論としては、
鏡に「中の世界」なんてありませんよ… ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから
ということで。



(追記)
人から言われて気づいたのですが、現在発表されている『ゼルダの伝説トワイライトプリンセス』のパッケージイラストも、左利きなんですね。http://www.nintendo.co.jp/wii/rzdj/index.html
これも左右反転して解決するんでしょうか?

先日紹介した『萌えるアメリカ』萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか
(→id:AYS:20061031)でも、米国で最初マンガを出版するとき、左右反転したので、剣を持つ手が左手になってしまった、という話があったなあ。

「デッサンがちゃんとなっているかどうかは、描いた絵を紙の裏側から見てみろ(左右反転してみてみろ)」などと言うらしいですが、左右反転すると荒が見えてしまったりするんですね。

左右というのはなかなか奥が深いです。

新版 自然界における左と右

新版 自然界における左と右

図解雑学 左と右の科学 (図解雑学シリーズ) 自然界は謎だらけ!「右と左」の不思議がわかる絵事典―鏡のしくみから宇宙の誕生まで うずまき右まき左まき (子どもたのしいかがく) 空間感覚の心理学―左が好き?右が好き? もし「右」や「左」がなかったら―言語人類学への招待 (ドルフィン・ブックス)

あと、ややこしいのは、「鏡はなぜ左右は反転するのに、上下は反転しないのか」問題ですね。なぜでしょう?

鏡の中のミステリー (岩波科学ライブラリー)

鏡の中のミステリー (岩波科学ライブラリー)

(以上、追記)