東京国立博物館「光彩時空」

(写真2枚追加)

都会の美術館は、夜開いていてほしいと、いつも思う。

たとえば。
珍しく仕事を定時に終えることができた。
「そういえば、あの美術館でちょっと気になる展覧会やってるんだよなー」と、フラっと夜7時頃寄ってみる。
2時間ぐらい展覧会を見て、ミュージアムショップで買い物して、9時すぎに美術館を出て帰宅。
そんな感じが理想。

そうじゃないと、美術館はちっともフラっと寄れる場所にならない。
いまの美術館は、せいぜい金曜だけ夜8時までやっているところがあるぐらい。
でも8時じゃあ、6時に仕事が終わったとしても、ギリギリ見れるかな、ぐらいなので、勤め人にはあまり意味がない。
結局、土日祝日の昼間に大混雑の中見なきゃならないということになって、そういうのはもったいないなーと思う。

ところがところが。
上野の東京国立博物館(略して東博というらしい)は、いま特別イベントをやってて、11月5日まで、夜8時まで展示を見ることができる。(まあ、残りの会期は連休なので、仕事の帰りという感じではないだろうけど)

さらに、野外のイベント(ライトアップと無料邦楽コンサート)は、夜9時までやっているから、夜7時ぐらいに上野に行って、1時間ぐらい展示を見て、1時間光と音のショーを楽しむ、なんてことができる。
こういうのをもっとやってくれ! という話ですよ。

というわけで、ある方からありがたくもチケットをいただたこともあり、今日行ってきた。

http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=3595
公式サイトより抜粋

光彩時空
―光と音が織りなす幻想夜景絵巻―

 照明デザインの第一人者である石井幹子氏のプロデュースによる光と音のイベント「光彩時空」を開催します。

 東京国立博物館には、表慶館明治42年重要文化財)、本館(昭和13年重要文化財)、法隆寺宝物館(平成11年・谷口吉生設計)など、明治から平成までの各時代を代表するすばらしい建築があり、建築ファンにも人気のスポットとして知られています。「光彩時空」では、これらのすぐれた建築群と、庭園、上野の森に囲まれたこの場の特徴を活かし、スペシャルライトアップと邦楽ライブをお楽しみいただきます。

 期間中の展示は、特別展「仏像 一木にこめられた祈り」を含む全館で、20:00までの夜間開館を実施します。優れた美術とともに、華やかな空間と豊かな時間をあわせてお楽しみください。

■ <光彩時空>要項
日時 2006年10月31日(火)〜11月5日(日) 17:00〜21:00
 スペシャルライトアップ 17:00〜21:00
 邦楽ライブ 17:30〜20:30
会場 東京国立博物館 屋外スペース
料金 夜間特別料金 一般400円 大学生300円 (19:30〜21:00に入館)
・特別展「仏像 一木にこめられた祈り」観覧料
一般1500(1100)円 大学生・高校生900(600)円 中学生以下無料
・平常展観覧料
一般600(500)円 大学生400(300)円 高校生以下・満70歳以上の方は無料


照明アーティストの石井幹子さんは、けっこうテレビに出ていたりして、有名な人だ。
フィンランド―白夜の国に光の夢 (世界・わが心の旅),光の21世紀,

このコンサートだが、東博は前庭が広いのがいい。
好きなだけ聞けるし、ちょっと飽きたら展示を見に行けばいいのだ。

音楽は、萩岡松韻という人と、堅田喜三久という人らしい。ふだん、なかなか聴く機会の少ない和楽器の演奏が気軽に聴けるのも良かった。

山田流 絲のひびき/萩岡松韻 1,日本の楽器(1)?箏?


東京国立博物館といえば、今年の映画『時をかける少女』(細田守監督) で舞台になって、あまりにも劇中でリアルに描かれているので驚いた。
実写映画版(大林宣彦監督)では原田知世が演じていた原作の主人公芳山和子は、東博に勤めているのだ。
映画を見た人の中にも一度実際に行ってみたいと思っている人もいるのではないだろうか。

時をかける少女 NOTEBOOK,時をかける少女 絵コンテ 細田守

でも、お金払って、普通の展示だけってのはちょっと……という人は、展示も見れるし、ついでに光と音のショーを見れる今回は、絶好のチャンスだろう。
デートカップルも多かった。人は多いが、それなりにロマンチックな感じなので、カップルにもオススメ。

現在、本館の国宝展示室で見られるのは狩野秀頼筆「観楓図屏風」http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=B07&processId=02&colid=A10470
室町時代の、秋の紅葉狩りの絵で、笛を吹いている人が描かれている。
秋に野外で、色彩と音楽を同時に楽しむ、という意味では、奇しくも今回の「光彩時空」とピッタリ。

絵は語る (8) 高雄観楓図屏風-狩野秀頼筆 記憶のかたち-

「仏像」展、最初はぜんぜん行く気がなかったんだけど、せっかくだからと行ってきた。さらに、実は東博に行く前は、国立西洋美術館の「ベルギー王立美術館展」にも行った。
これらの展覧会も大変良かったので、明日以降のブログに書きたいと思う。
(とりあえず会期がすぐ終わってしまうこの「光彩時空」をさっさと紹介しなければ)

それにしても、三脚なしで夜景を撮るのはここに貼った写真が限界だ。看板にカメラを載せて撮ったりしたけど。みなさん綺麗に撮ってて尊敬。

素晴らしい「光彩時空」の写真が見れるブログ:
http://yoimatsuri.sblo.jp/article/1638451.html
http://dewacello.passagekikaku.com/?eid=285975
http://blog.o-numa.info/?eid=399783
http://blogs.yahoo.co.jp/k76kaka/23078195.html

(11月5日追記)
Mizukiさんのコメントに返信する際に気づきましたが、「(光彩)時空」と「時をかける(少女)」というのも、微妙に符合しているんですね。

このアニメ映画版「時をかける少女」になぜ東博が出てくるかというと、絵画は時を超えるからなのです。
たとえば今回紹介した、「観楓図屏風」は、狩野秀頼が描いた瞬間から、500年の時を超えて我々の目の前に現れました。
対して、光と音楽の芸術である今回の「光彩時空」は、その瞬間にしか味わうことができない、時を超えられない芸術です。
それはそれで、儚くていい。

あの音と光のコンビネーションは、その瞬間瞬間で消えてしまうけれど、実際にその場で体験した我々の心には、ずっと残るのです……とかクサイことを書いてまとめるのはやめますけど。(笑)

ちなみに、特別展「仏像 一木にこめられた祈り」も見たいなら、最初からこの特別展のチケットを買って入ったほうが得。(この展示は、所要時間約1時間)