fly me to the moon

お気づきかと思いますが、最近はあまりゲーム論考系日記ではありませんでした。
引用したくなるような文がネットに転がってなかったのです。
が、久々に来ました。

はえるさんhttp://someiyoshino.cool.ne.jp/NowOrNever/より。
それにしても、『エヴァ2』あと一週間もしないうちに発売だったんですか。知らなかった。私は『ガンパレ』に適応できなかった人間ですし、特に『エヴァンゲリオン』好きでもないので静観の構えですが。

2003年11月13日 プラグドゲーム
 さて、新世紀エヴァンゲリオン2とはどんなゲームか? それはアルファシステムが誇るゲームエンジン「カレルシリーズ(※1)」のバージョン3によって実現される、エヴァンゲリオンワールドシミュレータです。
(……)
 「自律思考しているように見えるプログラム」を実現する方法はいくつかあるのですが、アルファシステムが取った方法は「集団を動かす事」でした。つまり、一人一人の行動に自立性を感じさせるのではなく、集団が動くことによって雰囲気として見える「生活観」に自立性を感じさせるのです。ガンパレにおいてその有効性は実証されました(※2)

 今回はこのカレルがPS2用に新規作成され、ガンパレより遥かに多くの情報量を処理できるようになりました。つまり「自律思考しているように「より」見えるプログラム」が誕生したのです。しかし、それだけでは「エヴァをゲームで再現した」事にはなりません。エヴァのキャラを立たせ、エヴァンゲリオンを立たせ、使徒と戦わせても、それだけでは「エヴァンゲリオンワールド」を再現した事にはならないのです。

 何が足りないのか? 答えは明確です。「庵野監督の意思」が足りないのです(笑)。物語構成上、ここではミサトにこういう役回りをして欲しい、ここで静かな音楽が欲しい、ここでレイのアップが欲しい、極太明朝体だ! という作家的演出欲求があります。エヴァにはまった人達は、キャラや世界観にはまったのではなく、この庵野演出にはまったのです。違うとは言わせません(笑)

自律的な「環境を作る」「世界を創る」というのは、ビデオゲームにおいては『シムシティー』の流れに位置づけられると思います。
これは、現実世界のシミュレータ的な要素が強く、コンピュータ技術者志向のゲーム制作者は技術的な興味からこういうのを作りたがる傾向にありそうな気がします。
ただし、あざとい演出でも仕掛けておかないかぎり、劇的なイベントは起こりづらく、進行は単調なものになりがちになる要因を制度的に内包していると考えられます。

一方、サウンドノベルや『ファイナルファンタジー』(11は除く)シリーズに代表されるように、筋書きのあるドラマは、制作者がゲームの進行をあらかじめ制御しやすく、劇的な展開を仕掛けることが用意です。
こちらは映画の方法に近く、映画志向・物語志向のゲーム制作者はこちらを作りたがります。
ビデオゲームはまず娯楽ですから、プレイヤーを楽しませるためには効果的です。しかし、ビデオゲームはプレイヤーが操作するメディアでもあるので、用意した筋書きとプレイヤーの希望する行動が一致していないとプレイヤーは不満を感じてしまいます(例「自由度が低い」)。
これはプレイヤーがやりたがる行動を予め予想しそれになるべく対応できるように作っておくというよりも、プレイヤーが筋書き以外の行動をとりたがらなくするような工夫が必要になると思います。

シミュレータは、現実世界がたいてい退屈なのと同じこともシミュレートしてしまいがちなので、一生に一度あるかないかというようなことは本当に一生に一度あるかないかぐらいの確率でしか発生しません。そんなのがボンボン発生するようだと、それはもはやシミュレートではないわけです。
一方、映画では一生に一度あるかないかというようなことが一日に何回も起こったりすることがよくあります。劇的を突き詰めるとそうなるわけです。

さて、このシミュレータと映画を合体させたのが究極のビデオゲームではないか? と考えるのも無理はありません。
ベースはシミュレータなのに、映画のように劇的なドラマが自動生成される、とか。理想を追い求めるゲームクリエイターはそういうのを夢想しがちです。
その端的な失敗例が『侍』だろうと以前書きました。また(現在秋葉原で新品が180円で売られている)『シェンムー』はイベントの自動生成こそ謳いませんでしたが、背景はシミュレータ色が強く、筋書きは決まっているのをなぞらせる(が、ぜんぜんドラマチックじゃなくてつまらんのですが)ものでした。

しかしこういのはまだ理想でしかなくて、プレイヤーが広い心でゲームが紡ぎだす粗を受容してあげなくてはなりません。
ガンパレ』は心の目を開いて(あるいは閉じて)自己修正しながらじゃないと遊べません。
先週の『かってに改蔵』の「中年のおっさんが高校生と歩いている、あれは親子に違いない」というアレですな。

ところで、チュンソフトの『金八』
http://www.chunsoft.co.jp/game/3b/index.html
ってネタだと思ってました。マジだったのか。
『街』同様、やってみると面白いんだろうけど、『街』同様、売れないというのはもはや確定ですな。チュンソフトはどうしてこうなんだろう。金八じゃないとダメなのか?
って、夢じゃないよね? これ。いまだに信じがたいのだけど。