007と寅さんの共通点

朝日新聞(1月10日)の連載コラム「三谷幸喜のありふれた生活338「007」をまとめて観ると」を読んだら、
古畑任三郎」「THE有頂天ホテル」などで有名な脚本家の三谷幸喜さんが、「007」と「男はつらいよ」の共通点について書いていた。
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そして初めて気づいた、007シリーズと寅さんシリーズの共通点の多さ。
落語の枕のようなミニエピソードがあって、それから本編に入る構成。
主人公のホームグラウンドから話が始まって(ロンドン、柴又)、それから世界(日本)各地に飛ぶ筋立て。
主人公を取り巻く魅力的なレギュラー陣(例えて言うなら、上司Mはおいちゃん、発明家Qはタコ社長、ミス・マニーペニーはさくらか)さらにボンドガールにマドンナ。
そしてどちらも名曲中の名曲と言うべき、テーマ曲を持っている。


 長年にわたって人々に愛されてきた二つのシリーズは、実は兄弟のように似ていた。
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なるほど、そうだったのか。
私は、実は寅さんはまったく見たことがないし、007もちゃんと見たことはない(たぶん家族がテレビで見ていたのを横で見ていたことはあると思うが)。

……とか書くと「そんなのも見てないのか」と、また怒られるんだよなあ。ごめんなさい。この間のRGN#4の前に、川邊先生の「007は二度死ぬ」を観ようと思ったけど、レンタル屋で貸し出し中で見れなかったし。

こういう構成のシリーズだから長く続いたのか、長く続くためにはこういう構成になるのか。まあ、どっちもなんだろうなあ。
こういう構成じゃないと、「さて、今回の話は」という感じでシリーズ化は難しいんだろう。

テレビで1年に一回ぐらいやっている、「ルパン三世」もこんな感じだ。
もっとも、こっちは「007」を意識してやっているんだろうけど。
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三谷さんのエッセイには、「007」を見たことがなかった奥さん(小林聡美)が「007はオースティン・パワーズ」と似ている、と評したら、「オースティン〜の方が007のパロディなのだ」とツッコミを入れた旨が書かれている。


1話完結のテレビドラマはどうなのかな。
三谷さんも絶賛していた「スパイ大作戦」(原題「ミッション・インポッシブル」)を、CSで録画して見ていたことがあるが、やっぱり古くて、今初めて見てもそれほど面白くなかった。スパイ大作戦 シーズン1 [DVD]
やっぱりこういうのは鮮度が落ちないうちに見ておかないとツライ。
当時、あるいは少し遅れて見ていた人は、今見ても面白いんだろうなあ。羨ましい。先に生まれた方が得をするのは、こういうときだ。


そんなに名作を網羅して見たわけでないが、私がモノクロ映画で面白いと思ったのは、「十二人の怒れる男」ぐらいな気がする。(思い出したらあと数作あるかもしれないが)

これも三谷さんが絶賛していて、「12人の優しい日本人」という名作パロディがあるのはご存じの通りだ。

12人の優しい日本人 [DVD]

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ぜんぜん関係ないけど、ここんところバラバラ死体のニュースばっかし。
私はそんなニュースは聞きたくないのだ。そういうのは京極夏彦の小説の中だけにしてくれ。
ポータルサイトでは、「迷惑ニュースフィルタ」を実装して、迷惑ニュースフォルダに勝手に分類されるようにしてほしい。

「ユナイテッド93」と9・11同時多発テロ捏造論について

映画「ユナイテッド93」をようやく見た。
大変面白かった。

映画をDVDなどで見ると、つい途中で飽きたり疲れたりしてしまって、
中断してしまうのだが、この映画は一気にエンディングまで見れた。(正味1時間40分ほどと、短めというのもあるが)

そういう意味では、町山さんの「究極のジェットコースタームービー」というのも納得だ。
ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記 - 「ユナイテッド93」は究極のジェットコースター映画
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20060514


911同時多発テロでハイジャックされた4機のうち、唯一目標に到達せず、乗員乗客以外の被害者を出さなかったのが、このユナイテッド航空11便。

米軍が打ち落としたためだとか言われていたが、乗客が戦ったからだ、ということになっている(これも本当のところはわからない。乗客が犯人と戦ったのは本当らしい)。

コメンタリーで監督が語っているが、テロリストと乗客(アメリカ国民)が操縦桿を奪い合うというラストシーンは、これからの世界の舵取りを誰が行うのか、ということを比喩的に表現したものだという。



この映画、もともと、「たけくまメモ」で紹介されていたので、公開当時に映画館で見たかったのだが、諸事情により見れなかったのだ。
たけくまメモ : 吐き気がするようなリアルさ
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_79e9.html

たしかにカメラが揺れまくって何が写っているのかわからなかったりする映像だけれども、DVDで見ると、ドキュメンタリーと見分けがつかない、というほどではなかった。

とても面白かったので、見終わった後そのまま監督のオーディオコメンタリーも全部見てしまった。(時間がもったいないので、早送りで字幕を読むという方法だけど)
で、このコメンタリーを読むまで、俳優のほとんどが無名で、管制塔や軍関係者の多くが本人が演じているというのを知らなかった。(もしくは公開時に読んでたけど忘れていた)
管制のトップのおっさんとか、名優っぽい風格だから、プロの役者さんだと思っていた。

撮影も、細かい打ち合わせなしに1時間カメラを回しっぱなしとか、かなり特殊な方法で撮ったらしい。よく成立するなあ。


そもそも、この映画をなんで今頃見たかというと、911テロ関係のことについて書く仕事をいただいたので、それをやっているからなのだ。

だが、なかなかいい参考図書がなくて困っている。
ベストセラーになった911テロ調査委員会の報告書↓の翻訳版があればいいんだけど、どういうわけか出ていない。

9/11 Commission Report: Final Report of the National Commission on Terrorist Attacks Upon the United States

9/11 Commission Report: Final Report of the National Commission on Terrorist Attacks Upon the United States

これに類する、911で事実とされているものがまとめられている日本語の本はないだろうかと探しているのだが、さっぱり見つからない。



いま、書店の棚には、911陰謀論の本が中心に置かれている。

私もブッシュやアメリカ政府は好きじゃないけれども、好きじゃないからといってこういう陰謀論を簡単に支持してしまう人々、というのには強い危機感を覚える。

この前紹介した、ゲームが好きじゃないからニセ科学の「ゲーム脳」を支持してしまうとか、いい話だからと言って「水にありがとう」を信じてしまうおっさんとかと同じだ。

暴かれた9.11疑惑の真相

暴かれた9.11疑惑の真相

9・11テロ捏造―日本と世界を騙し続ける独裁国家アメリカ

9・11テロ捏造―日本と世界を騙し続ける独裁国家アメリカ

「9.11」の謎―世界はだまされた!?

「9.11」の謎―世界はだまされた!?

ゲーム脳の恐怖」「手塚治虫=ストーリーマンガの起源」とか同様、「売れる本を企画して作った」というのは、文章を書いてお金を稼ごうとしている身からすれば、「上手い」「見習いたい」とは思うけれども、読者をペテンにかけるのはやっぱりどうかと思う。
ほとんど悪徳商法の手口と同じだからなあ。

だいたい、WTCにあらかじめ大量の爆弾を仕掛けていたなら、わざわざ航空機をハイジャックして自爆テロを行う必要なんかないではないか。

911陰謀論への反論などはこのサイトとかを見るといいかも。

ほぼ日刊イトイ新聞 - 翻訳前のアメリカ。 9-11陰謀論
http://www.1101.com/suzukichi/2006-09-11.html
http://www.1101.com/suzukichi/2006-09-12.html
http://www.1101.com/suzukichi/2006-09-13.html


"「9.11テロ」5大疑惑の真相"
http://www11.ocn.ne.jp/~nbbk/911/spa.html


9.11 ~N.Y.同時多発テロの衝撃の真実~ [DVD]

9.11 ~N.Y.同時多発テロの衝撃の真実~ [DVD]

ディスカバリーチャンネル ZERO HOUR:9.11同時多発テロ事件 [DVD]

ディスカバリーチャンネル ZERO HOUR:9.11同時多発テロ事件 [DVD]

この前金券ショップに行ったら前売りが500円で叩き売りされていたので、たまには邦画でも見るかと『レディ・ジョーカー』を仕事前に見てきた。

あんまり邦画を見ないので、当時ナムコのCGスタッフが作ったという日活の社名ロゴ動画(金属の輪みたいなのが蠢いてるやつ)を見たり、ナムコ中村会長の名前を見たりとか、そういうとこに反応してしまった。

聞くところによると、『オーシャンと11人の仲間』は戦争だかなんだかで虐げられた男達が犯罪という形で社会に復讐する話だかなんだか(←違うかも。リメイク版『オーシャンズ11』はぜんぜん違うらしいが。どっちも未見)。
これも「部落」「在日」「障害者」を含む犯人グループが大企業を恐喝する話で(グリコ森永事件がヒントらしい)、影響受けてるのか?

渡哲也は渋くて良かった。高倉健っぽい感じ?
ミクシィレビューではじめて知ったのだが、イケメン刑事役の徳重聡は例の21世紀裕次郎なのだな。演技も特に下手な印象はしなかったし(演技力が要求される役でもなかったが)、カッコいいのでいいのではないか。

いかにして警察を出し抜いてカネを受け取るか、というのがこの手の事件の見ものかなあと思っていたら、スルーされていたり、ちょっとかゆいところに手が届かない感じ。

話の概要はわかるのだが、細かい点が原作読んでないのでわけわからんかった。

辰巳琢郎菅野美穂の結局父親役らしかったのだが、辰巳はもっと若い役の印象があるので、兄なのか父なのかよくわからず、理解に手間取ったり。(検索してみたら、1958年・1977年生まれ)

犯人側の動機とか、動機と関係がありそうないくつかの事件の関連も不明で釈然としない。

公式サイトのキャッチコピー「あんたらには、わかりやしないよ。」って、俺たち観客のことかーーー!
http://www.ladyjoker.jp/top/top.html

カサ・ミラ

『ガウディ・アフタヌーン』という映画をCSでやっていたので、録画したのを見てみた。
http://www.minipara.com/movies2002-2nd/gaudi/review.shtml
バルセロナが舞台で、ガウディの建築がいっぱい出てくる。
重要人物が済んでいるのがカサ・ミラ(かな?)で、その他サグラダ・ファミリアグエル公園なんかが出てきた。

が、映画の内容は別にどこの街でも成立する脚本。
浅見光彦がわざわざ観光地で待ち合わせして事件について話すようなもんだった。

あまり詳しくないのでこの表現が適切かどうか自信がないが、トランスジェンダーと親子の愛がテーマ。
……のコメディ、ではないんだよなあ。かといってマジメ全開な映画でもなく。
ジェンダー云々はともかく、まぁ割と他愛のない話だった。

女装の男性が出てくるのだが、彼(女)を演じた俳優さんは男性なのか女性なのかよくわかんなかった。

Fritjof Capra監督『MindWalk』という、モン・サン・ミッシェルが出てくる映画もあるらしいが、これ日本語版はまったくないのだろうか? 検索しても見つからない。
http://www.fritjofcapra.net/mindwalk.html

NHKハイビジョンで、ハイビジョン特集カッティング・エッジ・映画編集のすべて」ハリウッド有名監督・俳優・編集者が明かす秘密 という番組を見た。

アメリカ製作のドキュメンタリーの翻訳かと思ったら、NHKBBCの国際共同制作だった。
内容はほぼ期待通りで、著名作品の監督・編集の語りに合わせて、実際の映画の映像をふんだんに実例に出し(さらには「やってみたがやめた」バージョンの再現もあったり)、編集技術の妙、編集技法の発達史を紹介するなど、包括的な内容。

映像演出に興味はあるんだけど、映画学校に行ったり実作したりはしてないという私にピッタリのレベルだった。

ハリウッド映画が大半で、古典的作品をそれほど見てない私でも、一度は目にしたことがあるシーンのオンパレード。
さらにエドウィン・S・ポーター、エイゼンシュテインリーフェンシュタール、グリフィスなどの作品も引き合いに。

編集(者)の歴史としては、
「初期の編集作業にあったったのは女性が多かった。それは、フィルムを切ったり繋いだりという作業が裁縫と似ていたからだ。
しかしトーキーの時代になって、電気技師的な技術が必要となったので男性がやるようになった。
いずれにせよ編集の重要さは近年になるまで認められなかった」
というような話とか。

概念としては、本を読んだりして知っていたことも多いのだが、やっぱり作者本人が語ってて、実際に映像を見せてもらえるというのは理想的。
「このシーンは撮影の都合でこういう素材しかなかったので、工夫してこうした」とかいう裏話とか。
最近はDVDのコメンタリーを熱心に聴くとたまにわかるんだろうけど、さすがにそこまで時間はない。まさにそういう話だけ編集された形で知りたい。

そうそう。こういうのを見たかったんだよ! という感じ。
ある意味、もっともテレビ向きの題材なのに、なぜかほとんどこうしたドキュメンタリーは作ってくれないんだよなあ。なぜなんだ?
撮影や演技についてのもやってほしい。

眠かったので、最初だけ見て、後は録画したものを見ようと思ったのだが、面白くてそのまま最後まで見てしまった。

ケーブルテレビでハイビジョン放送を見られてうれしいと思ったのは久しぶりだ。(けっこう見たい映画も放送されるのだが、いつも録画しているCSなどとかぶっててダメなことがほとんど)
定石通り、BS2や地上波でも放送されるとよいのだが。

だがオレは納得したいだけだッ!

いまさらだが映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』を見てきた。(同日、『LOVERS』『華氏911』も見てきたのだがその話はまたいずれ)
ハリー・ポッター』の原作本は1作目を母から借りて最初を読んだだけ、映画は1作目・2作目とも劇場で見てけっこう面白く感じて、DVDはamazonのバーゲンで安く買ったけどテレビサイズで見てもあんまり面白くないかも、と思った程度である。

で、3作目であるが。
つまんなくはないのだが、脚本・構成に難があると思う。これは前2作を見たときは特に感じなかった気がする。読んでないので、原作からの問題点なのかどうかよくわからない。

特に後半がかなーりイマイチに感じた。

以下、超【ネタバレ】モードですのでよろしく。

●難点その1 敵

アズカバンの囚人が実は冤罪というのは、なんとなく予想がついていたのだが、真犯人の正体がネズミとか、その辺の意外さはまあ驚けてよい。
これは一作目でスネイプ先生が犯人と思わせておいて、マヌケなターバンが悪者だったというどんでん返しと同じでけっこう驚かされたときと同様(同じパターンではあるが)。
ただ、ロンのネズミがいなくなるという伏線はあるものの、「ネズミの行動がなんか怪しい」という伏線がないので、唐突に感じる。
「夜の廊下での、地図上の謎の足跡」という伏線はまあいいのだが、ネズミが映るシーンでも何か伏線が欲しかったところだ。

新任の先生が実は狼男という設定はよくわからん。最後に無理やりバトルを仕掛けようとしたため??
この設定がまったく必然性がない。しかも理由は薬を飲み忘れたから? 何それ。

アズカバンの看守がナズグルみたいな奴で、ほとんど見境なく人を襲うという設定もよくわからん。そんな奴野放しにしちゃダメじゃん。

ということで、今回、本来敵でないはずのアズカバンの看守モンスターと、狼男先生がラスボス、というよくわかんない設定になっていていまいちラストバトルの動機付けに欠ける。
本来ラスボスであるはずのネズミがなんか逃げたっぽい、というのもしまらない。

●難点その2 説明不足

で、実はアズカバンの囚人は冤罪っていう話とか、真犯人はネズミっていう話とか、新任の先生とその二人とハリーの父が同級生という話とか、唐突に一気にセリフで語られて、しかもスネイプ先生の乱入があったりハリーのドツキがあったりして、この辺ぜんぜん整理されてない。理解するのが大変だった。

それにしてもなぜ冤罪になってしまったのか説明がないのでさっぱりわからない。

あと、スネイプ先生はやはり実はいい人で、結局ハリーたち子ども3人をかばいまくるし、そもそも授業中に唐突に狼男の話をして、ハーマイオニーが得意げに答えたら「中途半端に知ったかぶるな」みたいなことを言って、もっとちゃんと調べてこいと宿題を出したのは、こうなることを予測していたのでハリーたちがこういう危険に遭ったときに備えさせようとしたものと思われるのだが、その辺の説明もないね。まあいいけど。

そういえば、冒頭のバスがなぜハリーのとこに来たのかもよくわからない。本筋とぜんぜん関係なかったな、あのバス。

●難点その3 世界のルールが破綻する便利アイテム

ハーマイオニーのタイムスリップアイテム。これ出しちゃっていいの?
これを使えば未来の自分が助けてくれることになって、今後どんなピンチがあってもOKになっちゃうぞ? 『ドラえもん』みたいにその辺はツッコまないで、ということなんだろうか。
あるいは、これまでなぜ過去の危機に使わなかったのか納得できない。ハリーの両親とかこれで助けられなかったんか?
これまでの使用例が「バッティングしてる授業の同時履修」って……。おい。

「歴史を変えるのはよくないから」ということなのかもしれないが、なぜ今回はOKだったのかもよくわからない。
よくわからんが結局ハリーたちは助かったんだから、わざわざ助けに行かなくてもいいだろという話になる。天馬だけ助ければいいじゃん。
あれ? タイムスリップをそそのかした校長は、ハリーたちがタイムスリップしていろいろやったということを知っていたんだっけ? そうではなかったはず。

この安易に万能アイテムを出してしまう危険性に関しては、万能レーダー地図についても言えるのだが。

ハーマイオニーがいつのまにか授業にいて、「いつ来たの?」っていう伏線もちょっと不自然だ。
タイムスリップ可なら、最初から最後までいていいわけなので不可解。これでは瞬間移動をしているような伏線ではないか。
授業を終えて廊下を歩いていたら、さっきまでいっしょだったはずのハーマイオニーが別の教室から出てきたとかの方が映像のインパクトもあるし、マシだと思う。

●難点その4 意味のないタイムスリップ

というわけで、今回、終盤はタイムスリップなのだが、これがどうしょうもなくつまらない。
もっとも好きな映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、『ドラえもん』や『スタートレック』シリーズでいろんなタイムスリップを見てる私なので、ちょっとうるさいですよ。

便利アイテム出しちゃっていいの? というのは置くとして、タイムスリップを許容したとしよう。
だが、何の面白さもない。
そもそも、天馬が最初に処刑されるとき、なぜハリーたちが意地でも止めずに見逃したのかが納得できない。止めようとしたが何らかの邪魔でできなかった、というのならわかるのだが。
だまって見てただけでしょ、アナタがた。何をいまさら。
タイムスリップして助けるために最初は見逃したとしか思えない。こういう作り手の都合がバレバレというのは嫌だ。

タイムスリップものの醍醐味のひとつに、過去を改変することがあるのだが、
本作では「何者かが石を投げてきた」「シシ神様が現れて助けてくれた」(それにしてもなぜ『もののけ姫』のオマージュ?)など、
歴史を改変しているのではなくて、すでに決まっている歴史のシナリオ通りに行動させるだけである。
しかも、タイムスリップ前にハリーたちは助かっているのだから、「はたしてハリーとハーマイオニーは、過去の自分たちを助けることができるのでしょうか!?」というサスペンスがゼロ。
ここが最大の問題点だ。

さっき起こったことの再現でしかないので、同じシーンを二度見せられてて激しく退屈である。
この先に何が起こるのかわからないのだから面白いのであって、何が起こるのかわかる映像を延々見せてどうするのだ。
タイムスリップを面白くする手段に使うのではなく、つまらなくする手段に使ってしまっている。これには呆れてしまった。

ハリーはシシ神様のことをお父さんだと思うのだが、タイムスリップネタが出た時点で観客は全員あれはハリー自身のシワザだとわかってしまうので、ハリーが「あれはお父さんじゃなくて僕自身だったのか!」とか言っても何をいまさら、という感じ。
のび太の魔界大冒険』の冒頭の謎のドラえもんのび太の石像の伏線の真相がわかったときみたいな感動をくれなきゃダメだろ!

最後の「急いで戻らなくちゃ!」ってのも意味不明。なんでロンを騙す必要があるの??
過去の自分に会ってはいけない、というのもタイムスリップものでよくある話ではあるが、ハリー・ポッター世界でなぜダメなのかは説明されていないのでその辺もいまいち釈然としない。


その他、個人的趣味での感想としては、私はヘタレ少年ががんばる話(『ダイの大冒険』のポップ君とか)が好きなので、前作でロン少年のチェスシーンで燃えたのだが、今作ではまったく活躍せず残念。
ライバルのドラコも、嫌な奴だが優秀な奴で、嫌な態度はハリーへのライバル心とか、プライドの高さによる屈折したものだと解釈していたのだが、今作では「助けてママン」という、ただの口だけのヘタレな奴になっててこれも残念。やっぱりリーゼントじゃないと力が出ないのかな?

と、気になった点だけを列挙してみました。
最後にフォローしとくと、でもまあ、見て損した映画ではなかったですよ。4作目も劇場で見ます。


*その世界でのルールをちゃんと伏線として出して、その上でサスペンスを生め! ってのはキリコさんがよく書かれています。
http://red.ribbon.to/~kiriko/column.htm
ここの「大長編ドラえもん」(特に「のび太の恐竜」)とか「ゲームとしての物語」あたりを参照。

2000

そのまま帰ろうかと思って定食屋のカウンター席で飯を食っていたら、隣に座っていた若い女性が聖書を熱心に読んでいたのでちょっと引いた。だが、『パッション』のことを思い出し、ちょうどレイトショーで観れるなと思って観に行くことにする。クリスチャンならこれを神のお導きとか言うんだろうが。
延々続く拷問シーンがひどい、海外では見た人が二人も死んだとかいろいろ聞いていたので、血を見るのが苦手な私は相当覚悟していたんだけど、心構えのせいか、それなりに聖書の知識があるので何が起こるのかわかってるからか、そんなにひどいとは思わなかった。