(前日の日記の続き)アニメ映画『東京ゴッドファーザーズ』(今敏監督)を見た。素晴らしかった。劇場公開時にお金を払って見に行かなかったことを申し訳なく思う。
映画の内容がクリスマスから年越しにかけての奇跡を描いた作品なので、年末に劇場で見れば最高だったのだが。つくづく悔やまれる。

公開前に漏れ聞こえてきた情報を総合すると、「リアルな東京の風景を描写」「主人公のホームレス達が赤ん坊の母親を探すために奮闘する話」「テーマは家族の絆・愛の感動的作品」というような感じだったので、てっきり国内外の評論家とかオトナ層受けを狙った、あざとい企画意図の作品なのかと疑ってしまったのだった。
だから、監督の前作『千年女優』はちゃんと公開時に見に行ったのだが、今回は迷っているうちにいつのまにか上映されていて、いつの間にか終わっていたので、見逃してしまったのだ。
見てみるとその疑いはとんでもない誤解だった。たしかに「リアルな東京の風景を描写」し、「主人公のホームレス達が赤ん坊の母親を探すために奮闘する話」で、「テーマは家族の絆・愛の感動的作品」ではある。だが、その実は、全編笑えるセリフ、ありえないシチュエーション満載の見事なコメディだったのだ。場内では笑いが絶えなかった。

「天丼」というお笑い用語がある。一度ネタを提示しておいて、忘れた頃にもう一度そのネタをやって不意をつくという笑いの手法である。この映画ではそれが実に多い。
この映画は偶然の連鎖で成立しており、後の偶然を導くために数多くの伏線が張られている。その偶然は「奇跡」であると同時に、「んなバカな」というギャグとして処理されているのがものすごく上手い。「ありえねー」という反応が非難ではなく、笑いとして昇華されている。ひとつのギャグが後のギャグのための伏線になっているのだ。

私のもっとも好きな映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』であるが、構成が巧みで後のシーンのギャグのために伏線を張りまくるという手法はこの映画と共通しているといえそうだ。
91分と、最近ではかなり短い上映時間だが(『王の帰還』203分の半分以下!)、内容が濃いのでまったく短さを感じさせない。

とにかく、ビデオ・DVD化されたら(4月28日発売予定 *1 )ぜひご覧いただきたい。ただ、もちろん一人で見ても十分楽しめるとは思うが、この映画は劇場で他の観客といっしょになって声を出して笑いながら見るのが一番気持ちいい見方だと思う。この辺は『少林サッカー』などに近いかもしれない。まさに劇場用アニメ。それだけに、人知れず公開されてしまったことが惜しまれる。日本のアニメ映画産業は『イノセンス』とかバンバン宣伝してる場合じゃないと思う(見てないけど)。


細かく気になった点としては、『千年女優』に続いて、またも赤ちゃんにホクロが。特徴をつけるためなんだろうけど、新生児にはホクロはないはずじゃ……。と、思ったら
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/cinema/1065565852/

553 :名無シネマ@上映中 :03/12/04 01:10 id:Me5T40eL
今日、北海道のローカル番組でこの作品について、今監督が語ってた。
赤ちゃんは千年女優の主人公の生まれ変わりなんだって。
あと、雪の演出にはこだわってる、とか、滑稽な悲劇を楽しんで欲しいとか
色々言ってたよ。

フーン。ネーミングもその辺からか。 

691 :名無シネマ@上映中 :04/01/01 12:14 ID:8nkpVjvK
>>689
大幅にネタバレします。
ギンちゃんと医者の後ろ姿は、ちょうど鏡に向かい合ったような効果狙って
意図的にそっくりに作画されている。つまり不幸でもないのに怠け心から勝手に
逃げ出したのがギンちゃんで、ハンデを背負いつつも努力して成功したのが医者。
医者の不自由な脚は、幸も不幸も結局は努力次第、何だかんだ言って
自業自得なんだよってことを言い訳上手のギンちゃんに思い知らせたわけだ。
それと娘が医者とデキてるって話は、どちらにしろ娘にとっては父親の姿こそが
理想の男性像だったのに(だからこそ彼女は医者に惹かれたし、
嫌われてると思いこんで逃げ回っていたギンちゃんのことも赦していた)、
何の加減なんだか随分とズレちゃったねー。ギンちゃん。ってことでしょお。

義足のシーンの意味が見ているときはよくわからなかったが、そういう解釈だと言われると納得。


関係ないが、今敏監督のサイトの掲示板を読んでたら次の記述が。
http://free1.has-u.co.jp/cgi-bin/free/media/u-bbs.cgi?room=kontact

[733] 「妄想代理人」第三話 投稿者:万年エキストラ
投稿日:2004年02月17日(火)21時24分
妄想代理人」第三話拝見しました。
この作品は武蔵野市を舞台にしてるようですが、晴美と秋彦が一緒にボートに乗ってたのは井の頭公園ですか?
だとしたらあの二人は別れますね。
ところで今さんは武蔵境の駅の近くにお住まいだと聞いたんですが、実は私もそうなんです。
吉祥寺にもよく行くので作品の中に知ってる場所が出てくるんじゃないかと思って観てます。

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今 敏@仕事場
参考写真は井の頭公園で撮ったようです。
あそこでデートすると弁天が嫉妬するんでしたっけか。
井の頭公園というとデートより、芋洗いのごとき花見が印象的。
あ〜やだやだ、と思いながらも何度か花見に参加したことがあります。
2004年02月17日(火)22時40分

あー、むかしデートすると別れるというジンクスがあるという公園があると聞いたことがあるが、井の頭公園のことだったのか。『東京スキャナー』でも井の頭公園でボートに乗ってデートしている男女のシーンがあるが、そういう含みもあったのかな。その後行って弁天の神社も見てきたけどそもそも同じ場所だと気づかなかったし、そのジンクスの話も思い出していなかった。やっぱり東京は奥が深い(?)。

今回のニアミスさん:http://web11.sfc.keio.ac.jp/~t00049na/blog/archives/000609.html http://d.hatena.ne.jp/qsaq/20040307#p3
批評等:http://d.hatena.ne.jp/dai_1120002/20031226 http://www.ne.jp/asahi/hp/mastervision/archive2003c.html#godfathers http://www.face-movie.net/diary_2003_tokyogodfathers.html

*1:amazonで検索すると「東京ゴッドファーザーズ 江守徹」って出るのはどうかと思う。

▼『東京ゴッドファーザーズ
アニメーション部門優秀賞の上映。今日の大本命。予想はしていたが、立ち見状態で私も席をとれなかった。というより、すんでのところで入場制限で入れないところだったのだ。なんとか床に座って見ることができた。
結論から言うと素晴らしかった。長くなったので次の日付で書くことにする。

あと、ミュージアムショップで『東京スキャナー』のDVDを購入。amazonとかで買おうと思ったのだが、六本木ヒルズとかでしか売ってないらしい。これもそのうち改めて何か書くかも。

メディア芸術祭にタダ映画を見に行くシリーズファイナル。
▼『茄子アンダルシアの夏
アニメーション部門推薦作品。劇場公開時に見に行こうと思っていたら、上映館も少なくていつの間にか終わってて見逃したのだ。
期待以上に面白かった。自転車レースの面白さがわからないので、原作は『茄子』の中でも退屈な話だったのだけど、アニメ版のレースシーンは圧倒された。心配だった主役声優に抜擢された、おらが町のスター大泉洋(『水曜どうでしょう』)の演技も違和感なかった。
テレビサイズでは十分楽しめなかったかもしれないので、ビデオ素材とはいえ大画面で見られてよかった。
それにしても、絵のタッチはモロに宮崎アニメなので、黒田硫黄なとこが全然ないね。エンディングの画は黒田だけど、映画を見た後だと似てない似顔絵みたいに見えた。原画に黒田硫黄がクレジットされてたけど、どのシーンなのだろう。いきなり劇画調の顔でわめくシーンかな? あれはむしろ『映画クレヨンしんちゃん』を連想した。

欧州発戦闘美少女

またメディア芸術祭にタダ映画を見に。
▼『東京スキャナー』『スキージャンプ・ペア オフィシャルDVD』
「アート部門・エンターテインメント部門 映像作品上映」http://plaza.bunka.go.jp/festival/exhibit/schedule_artent.htmlだが、「アート部門/映像」は眠くなる。というか途中でうとうとしてしまった。しかし押井守監修『東京スキャナー』の曲で目が覚める。半年前六本木ヒルズで見たけどid:AYS:20030912、やはり素晴らしい(いま自分が住んでいる街の現在をテーマにしていて、最近初めて行った場所が多く出てくるってのもあるけど)。
前に見たときは森ビルのほぼ最上階というロケーションで見たのでたいして気にならなかったが、六本木ヒルズを神々しく描こうとする意図が鼻についた。スポンサーが森ビルだからしょうがないのだが、森ビル社長のご機嫌をとろうとしてるみたいでちょっとだけ萎え。途中で恵比寿ガーデンプレイスにもロックオンするから、写真美術館で上映するのは問題ないが(ちなみに2階のメディア芸術祭展示でも、地下の「わざとこころー日本式・アニメーションの探検」展でも延々上映されていて、上映されすぎである)。DVD買おうと決意。
スキージャンプ・ペア オフィシャルDVD』は5分だけの抄録だったけど、年配の人が声を出して笑ってた。でもこの作品は大画面で見るもんじゃないと思う。CGっぽさが目立ってしまう。最初にネットで圧縮しまくりの小さい画面で見たときが一番本物のスキージャンプ中継っぽく見えて面白かったな。
▼『ケイナ』
劇場公開直前のアニメーション部門推薦作品『ケイナ』。フランスのCGアニメ。押井守曰く「ハリウッドではあり得ない色彩感覚」というのが宣伝文句なんだけど、全編金色っぽい色彩だった。まだ見てないけど予告からすると『イノセンス』の色彩感覚がかぶっちゃった、ということじゃないのかな?
CGの方はあまり判定センスを持ってないのでなんだが、最近の洋ゲーによくあるような絵柄だと思った。
お話としてはイマイチかな。世界の謎を解いていくような話だけど、あんましワクワクしなかった。
英語音声だったのだが、ケイナはカィーナと発音していた。フランス語だとケイナなのか?
●以下ややネタバレ
最初の方では『ラピュタ』『ナウシカ』を連想させるシーンが出ていたので、そういう映画かと期待したら別にそうではなかった。むしろ、なんとなく全編CGで惑星の運命とかテツガク的なテーマとかを語ろうとして、あんまし成功してるとはいえないという点で映画『ファイナルファンタジー』を連想した。
キャラクターの性格とかが悪い意味で類型的だし、とにかくいわゆる世界観で見せようという映画なので人間ドラマもほとんどない。この辺は魚類に感情移入させるという離れ業をやってのけた『ファインディング・ニモ』と正反対かも。
ケイナたち人間の他、異星人勢力が二つ出てくるんだけど、善の方の異星人といっしょにいる虫はどういう存在なのかよくわからなかった。
最後も重力とかがどうなってるのか激しく疑問。

本日のニアミスさん:id:qsaq:20040305(写美で上映されたのは2/28と3/4だけなので同日だと思われる)